いじめアンケートに配慮
- 効果を高める学校アンケート Q&A 教育新聞連載 No.5 -
- 質問
- 中学校の生徒指導担当です。いじめに関するアンケートを考えています。これまでに、生徒の起床時間や食事などの生活習慣に関するアンケートを実施したことはありますが、いじめに関する調査は初めてです。どのような点に配慮して実施すればよいのでしょうか。
- 回答
- いじめに関する対策の一環としてとして文部科学省が8月から「子ども安全対策支援室」を設置するなど、さまざまな角度からの対応策がはじまろうとしています。またいじめの実態を調査するためのアンケートも対応策の一つとして必要になってきます。そこでいじめアンケートを実施するさいに学習調査や生活習慣調査など他のアンケート調査と比べ、注意する事柄について述べていきたいとおもいます。
- (1)アンケート調査実施の周知
- アンケートの実施については必ず保護者などには事前に連絡することが望ましいと思います。児童・生徒にプリントなどで簡単な実施の趣旨とお願い文を配布すればよいでしょう。
- (2)無記名での実施
- いじめアンケート調査については無記名式で行なうことを基本に考えてください。記名式ではどうしても、回答者にバイアスがかかり、正確な調査にはなりにくいと考えられます。平成22年度に文部科学省が実施した「いじめの問題への取組状況に関する緊急調査」によると、記名式によるいじめアンケートを実施した割合は小学校が72.2%、中学校が73.6%、高校で38.4%でした。被害者、加害者の特定を行なうことは、重要なことですが、いじめアンケートの本来の目的はいじめの実態を把握しその対応策の基礎データのための調査と考えるべきです。
- (3)いじめの定義をきちんと伝える
- いじめの定義については、文部科学省が平成18年度の調査で定義していますが、児童・生徒にとっては非常に難しい文言です。その内容をわかりやすく説明できる文章を作成し、アンケートのなかに、組み込んでください。
- (4)実施要綱について
- アンケートの実施については綿密に行なうことが重要です。例えば回答票を回収するときにも、箱の中に無作為に放り込んでいくなど、工夫が必要になります。またアンケートはできれば同時実施か同日実施が好ましいと思います。欠席者についても、どのように扱うのかも事前に協議しておいて下さい。
- (5)アンケートの結果報告
- 結果の報告は必ず行なってください。アンケートの質問項目は10から20ぐらいにしておけば集計等にそれほど時間はかからないと思います。単純集計だけでも良いとおもいます。大事なことは、素早く処理して、報告することにより学校側のいじめに対する「意思表示」を明確にすることではないでしょうか。
いじめアンケート調査の目的は、大きく二つの事柄のために行うと考えられます。
一つは、いじめの実態を把握し、具体的な対応策を構築すること。そしてこちらのほうが重要だと思いますが、学校の意思表示として「いじめ」とうい問題に対して、真剣に取り組んでいくことの表明だと思います。そのためにも家庭、地域を巻き込んで「いじめ」に対して取り組むという姿勢を児童生徒たちに示すことではないでしょうか。子どもたちには結果を伝えるだけでなく、どうしてこのようなアンケートを行なう必要があるのか、など意識的な問題を提起するとよいでしょう。
平成24(2012)年9月3日(月曜日)教育新聞掲載 文責 久玉和昭