統計リテラシーを学ばせる機会に

- 効果を高める学校アンケート Q&A 教育新聞連載 No.4 -

質問
教職20年目の小学校の教員です。職場で中堅となり、後輩への指導の機会が増えてきました。その中で、児童へのアンケート結果をどう生かすのかが課題となっています。数字から自校の実態を加味して、今後の指導や体制づくりを考える際に、より一層役立てたいと考えています。アンケート結果の読み取りのポイントはどのようなことなのでしょうか。
回答
現代の統計情報は、インターネットに代表されるように玉石混合の統計数字が一人歩きしています。調査設計、分析、検定を統計学的に検証し実施した情報は非常に価値のあるデータと判断できますが、発信者の独断的な解釈に基づく裏づけのないデータ、間違った分析から導かれたデータなど誤った意識誘導を伴うケースも少なくありません。
 統計リテラシーはこのような膨大な情報量の中から、信頼できるデータかそうでないのかの判断を的確に行なうことの出来る能力のことです。実際には高校教育からでないと教育していくことは難しいと思われていますが、小学生や中学生でも理解できないわけではありません。もちろん統計学的な基礎理論(分析、検定など)を必要としない方法をとらないといけません。統計リテラシーは、私の考えでは次の三つの事柄についての理解を深めることと考えます。
1 統計を理論として理解する
2 さまざまな社会現象について自分なりの仮説を立てる能力を育てる
3 直感力を育てる
1 は平均、度数分布、グラフなどの概念が理解できれば充分でしょう。いずれも小学校課程で学習します。実際にはそれだけの知識で問題ない場合がほとんどです。インターネットの情報でもグラフの見方がわかれば充分でしょう。
2 については、社会現象(政治、経済、文化など)について徹底的に会話(議論)をする習慣性を身につけさせる事です。家庭や日常的な会話、あるいは授業のなかで自然にそれが出来るようになればいいと思います。
3 の直感力の養成が一番大事で最も難しいと思われます。しかし、②の能力が育てば批判力も同時に育ち、物事の本質を見抜く力が育つはずです。
以上の事柄を、教育するために、学校でのアンケート調査の結果を使ってみたらどうでしょうか。現実の問題に対してのアンケート調査結果は、児童・生徒に興味を引き起こさせるには適切な教材だと考えます。アンケート調査は、調査を行い、分析し、調査報告書を提出して完了ではありません。特に学校現場のアンケートにおいては、報告などを通じて保護者や児童・生徒への教育的な指導を伴う必要があると考えます。調査したアンケートの結果は、他の学校や、日本のどこかの学校の問題でなく、当事者である児童・生徒の日常的な学習や、生活の結果を表しているものです。例えば全国標準と比べた場合、平均が高い、低い、の比較で終らず、その背景に隠れているものは何なのか、「地域差」なのか、「意識の差」なのかなどを児童・生徒同士で議論が出来るようになればいいと思います。
 現代の子どもたちは、インターネットに代表されるように、シャワーのように情報を浴びながら生活しています。「良い情報」「悪い情報」も区別しないで受け入れてしまうと、物事の本質が見抜けないで、批判的な能力も育たないで成長する可能性もないわけではありません。否が応でも子どもたちは情報社会の中で生きていかなければなりません。子どもたちの生きる武器としての統計リテラシー、情報リテラシーを身につける教育もこれからは必要だと考えます。

平成24(2012)年8月2日(木曜日)教育新聞掲載 文責 久玉和昭

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