関係性を見るクロス集計

- 効果を高める学校アンケート Q&A 教育新聞連載 No.2 -

質問
小学校3年生の学級担任です。より良い学級運営のために、児童に「朝食を食べる習慣と学校生活への意欲」についてアンケートを行ないたいと考えています。
 「朝食を食べる習慣」と「学校生活への意欲」のそれぞれの項目の集計は自分でも出来ると考えています。ただ、これらの項目の関係をどのようにデータ処理していけばよいのか、また、関連性を見るために集計(クロス集計)はどう進めていけばよいのかがわかりません。データ処理などの方法と注意点についてアドバイスをお願いします。
回答
アンケート実施後のデータ処理を行なう場合、現在はかなり使いやすい集計ソフトがありますので、入力ができていれば単純集計、クロス集計にしてもデータそのものは簡単に出力されてきます。しかし分析作業は基本的な統計処理と知識が必要になってきます。そこで今回は統計処理で多く使われるクロス集計の意味と分析の方法について述べていきます。例えば、クラスである事柄について多数決をとるために挙手で決定したいと考えたとします。30人のクラスで21人が手を挙げ賛成したら70%が賛成でありそれがクラス全体の意向と判断できます。これが単純集計です。しかしこれだけでは賛成した生徒の男女の比率や家族構成などの情報は判りません。つまりクラス全体の意向は判断できましたが、どのような生徒が賛成したのかは判りません。単純集計のみでは、調査母集団全体の傾向は判断できますが、その属性や意識・行動などの詳しい内容は把握できません。それを調査するためにはクロス集計が必要になってくる訳です。クロス集計とはある質問項目と他の質問項目との関連性を詳しく調べるものと考えていただければいいでしょう。
 では実際の作業としてどのような手順で進めていくのかを考えて見ましょう。最初に行なうことは全ての調査項目の単純集計の分析を行ないます。データ数としては質問項目数だけありますのでそれほど多いデータ数ではありません。このデータを十分に読み込み、調査母集団の全体の傾向を徹底的に検証してください。また質問票を作成したときの調査母集団のイメージと実際のデータを比較していくことも大切です。この作業が充分に行なえれば単純集計の結果だけで調査報告書を作成することもでき、そのような調査報告書もよく見かけます。
 次にクロス集計の分析を行なうわけですが、質問項目が20前後のアンケートでさえ、クロス数は約200個もあり、全てのデータを読み込み、分析・検証していくには時間がかかりすぎて大変です。そこでアンケートの質問項目を作成するとき議論した内容を基準にしてクロス分析を行なって下さい。例えば、「朝、食事を取るかどうか」を質問項目として作成するときに多分、「男女の差があるかもしれない」「家族構成によって差がでるかもしれない」という議論はなされていると思います。つまりアンケートを作成するときに問題点として議論をした点は必ず質問項目として存在しているかデータが必ずあるはずです。それらの質問項目を関連項目としてクロス集計を行なえば的確な分析が行なえると思います。
 最後に分析結果を統計的に論じることができるのかどうかという大きな問題が残っています。「有意差検定」の問題です。朝、食事を取らない男女の割合が60%と40%だったとき男女差があると述べてよいのかどうかという問題です。何%と何%の割合の時、統計的な有意差があるのかどうかは一概には言えません。統計的に「有意差」があるとはどういう意味なのか、また「有意差」がない場合はどうするのか。この問題は次回で述べたいと思います。

平成24(2012)年5月7日(月曜日)教育新聞掲載 文責 久玉和昭

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