結果は経験の客観的裏付けに

- 効果を高める学校アンケート Q&A 教育新聞連載 No.3 -

質問
小学校3年生の学級担任です。児童の「朝食を食べる習慣と学校生活への意欲」についてアンケートを実施しました。例えば「学力検査」と「グループ間」「生活習慣」などの関連をどのように分析し、記述すればよいのかがわかりません。また得られたデータの信頼度がどの程度あるのかの判断がつかずに困っています。データの分析から、どのような調査結果のまとめをしたらよいのでしょうか。
回答
アンケートを回収し、データ整理が終りいよいよデータ分析、執筆作業を行なうときにどのような方法で進めていけばよいのか述べていきます。
まず、アンケート調査を実施した目的を再度考えてみます。日常的に生徒と接している教員にとって、生徒たちはおそらくこのような実態であると言うことは経験的に推測できるかと思います。アンケートはこのような部分をデータ的に裏づけできるのかどうかを分析するものと考えていけばいいと思います(一回目に述べた仮説検証型です)。経験は個人の主観ですが、データはその主観を客観的に裏付けするものです。
 例えば「生活習慣」と「生徒の学力」の関係を分析するとき、生活習慣の管理できるグループと、学力の高いグループはほぼ一致するのではないのかという経験からの推測を、データとして裏付けられるのかどうかを検討していくほうが、分析は行ないやすいと考えられます。もちろん実際の分析は、「朝自分で起きることができるか」「食事をきちんととるか」「数学の成績」「国語の成績」などの多くのクロス表についてひとつひとつ分析が必要になります。
 ここで重要なことはそのデータがはたして、信頼度があるのかどうかということです。
 「生活習慣」と「学力」のクロス表からこのデータの信頼度はどうなのか、この結果は果して、断定しても構わないのかなどさまざまな問題が起こります。現在の統計ソフトではデータ検定は簡単にできますが、その数値を読み取るためにはある程度、基礎知識が必要になります。相関係数やクロス表などのデータ出力において、*(アスタリスク)のような記号や、p<0.05有意差ありのような表現がよく見られますが、いずれもデータの信頼度を表すと考えてください。p値はそのデータの確率値であり、p<0.05有意差ありなら簡単に言えば「そのデータにおいて信頼できない割合は5%以下ですよ、そのデータの大半は信頼してもいいですよ」という意味だと考えればいいわけです。実際にはかなり複雑な統計検定理論があるわけで、そのような解釈は一面的でありp値の出力値によっても解釈が異なりますが本稿ではそこまで論述しません。要するに*の記号や、p<0.05有意差あり、などの表示があればそのデータはかなりの確率で信頼してもかまわないと考えてください。
 ただ、実際に分析・記述を進める際、このような統計ソフトを使わないでも問題はありません。まず、相関図、折れ線グラフ、棒グラフなどを利用してグループ間に、差があるのかどうかを目で見てから検討してください。じっくり検討した結果と統計的検定結果にそれほど大きな違いは意外とないものです。実際の記述には、グラフなどを表示することによって、視覚的な説明を行なうようにしてみてください。
 最も大事なことは何故そのような結論がでてきたのか、生徒の問題なのか、環境の問題なのか、全国標準と比べてどうなのか、このアンケート調査をふまえて学校としてはこれらかの対応をどのような形で行なっていくのか、などの具体的な説明を報告できればアンケート調査の実施した意味が充分認められると思います。

平成24(2012)年6月4日(月曜日)教育新聞掲載 文責 久玉和昭

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