中日新聞(令和4年8月15日発行)に掲載されました

つながる。 退所後も 富山 養護施設の子と支援団体(2022年8月14日 05時05分)
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在園中から交流 社会での孤立防止 「ルンルンカフェ」と題したトーク会が数年前から富山市中布目の児童養護施設、ルンビニ園で開かれている。若者を支援しているNPO法人などの男女が、さまざまな理由で親元から離れて園で暮らす子どもたちの話し相手となっている。在園中から施設外の大人と交流する機会を増やし、社会でのつながりを増やすのが狙いだ。 (山岸弓華、写真も) 「このユーチューバーが面白いんだよ」「この前、学校で面白いことがあってさ」。和やかな雰囲気の中、入所する高校生たちは、学校生活や趣味、将来の夢について語り合っていた。 おしゃべり相手をしているのはNPO法人「教育研究所」(富山県黒部市)理事長の牟田(むた)光生さん(44)、「オフィスカラフル」(富山市)代表の松居和世さん(46)。ざっくばらんに語り合う中で、子どもたちが内に秘めている将来やお金に関する悩みについて相談に乗る。 参加した女子生徒は「将来やりたい仕事について話すことができてよかった。背中を押してもらった気がする」と笑顔を見せた。 高校卒業などを機に、児童養護施設を退所した若者は「ケアリーバー」と呼ばれる。ケアから離れるという意味だ。 退所後は早期の自立が求められる一方で、周囲に頼れる大人が少なく、社会から孤立する危険性が指摘されている。厚生労働省が昨年公表したケアリーバーへの調査では「親のサポートがないまま生きるのは大変で、孤独感を覚える」「緊急連絡先に記載できる人がいない」との声が寄せられた。 牟田さんは「彼らにとって頼れる大人を少しでも増やしていきたい。彼らが困った時に、相談を受け付けることができれば」と話す。松居さんは「若いうちにいろんな人との関わりを持つことが大事。頼れる人が世の中にこんなにいるんだということを知ってほしい」と願う。 ルンビニ園では本年度から、卒園生の現況調査を開始。専任担当者を設けて卒園生と連絡を取り合い、必要に応じて生活の相談に乗る。「ルンルンカフェ」と合わせ、在園中から退所後に至るまで切れ目なくフォローする試みだ。 銘形(めいがた)高雄園長(74)は「これまでは退所すれば『さようなら』で、子どもたちが仕事などを辞めていないか、把握できていないことが多かった。今後は退所後も、長期的なつながりを持っていきたい」と語る。