中高生の心を取り込むネット社会

2013年10月23日福岡県私立学校協会の講演内容です。

1.発達障害の診断基準の変更

皆さん、ただいまご紹介いただきました牟田武生と申します。今日一日よろしくお願いいたします。私は教育員会等行政で仕事はしていたのではなく、ずうっと民間にいました。

学生時代は教育心理を学んで、カウンセラーをやろうと思ったんですけれど、その当時、教育委員会の相談室はほとんど退職した校長先生で、我々若手は入れなかったんですね。もうそれならば自分でやろうということで、24歳の時に自分で研究所を設立し、民間で教育相談や支援を行っていました。

今年で40年近くこういう仕事をやっていたのですけれど、40年経って、やはり僕はだまされていたということに、最近、気がついたんです。

今66歳で歯槽膿漏になっちゃって入れ歯が壊れて、みっともない入れ歯なしの話なんですけれど、いわゆる40年前、私が教育心理にかかわったころ、興味があったのは、自閉症の研究だったんですね。その当時、大学、専門医療機関で自閉症の研究をやっていました。自閉症の軽度、今いうと発達障害です。

その当時、脳の微細な機能の障害によって、発達障害といわれる子どもが発見されました。原因は脳の微細な機能の障害だと言われ始め、支援や研究は、教育や心理の世界ではなく、医療の領域なのだと言われはじめました。

脳の微細な機能の障害だったら、これは医療領域の問題だから、我々教育に携わる者がかかわっていっても当然限界があるだろうということで、私は発達障害の人たちの支援、あるいは研究をあきらめたんです。

もっと純粋に心理的な問題なのが、長欠児の問題、それから、登校拒否、まあ、不登校と名前は変わっていきましたけれど、そういう人たちの支援に研究対象が変わっていったんです。8月の時にもお話しさせていただいたんですけど、今年の5月にアメリカ精神医学会の診断基準が変わり、日本の精神医学の、いわゆる診断基準、これは日本だけじゃなくて世界の約7割から8割がその診断基準を使っています。

DSMIV‐TR、IVというのはローマ数字で、TRというのは改訂版を表し、今年の5月まで使っていました。この6月からアラビア数字の5になりました。全面的に改定されたんですね。

その中で発達障害の問題というのは、日本は非常に数が多い。言葉は悪いんですけれど、「犬も歩けば棒に当たる」じゃなくて、発達障害に当たるというようなところまで来ています。世界的に見ても非常に奇異な現象、おかしな現象。統計的なデータから見ると、特におかしい。そんなにいるわけがないんじゃないかといわれたんですね。それも見直しの原因の1つになりました。

今回の診断基準の改定により、基本的にアスペルガー症候群といわれている人たちは、結論として二つの要件を満たさなければいけないとなりました。一つは日常の行動性の中で、手をヒラヒラさせたり、あるいは集中力がなく落ち着かなかったり、普通の人と違った行動、情動性の問題を一つ抱えている。もう一つとしては、年齢に応じた人間関係能力が育っていない。場の雰囲気、人間関係としてのコミュニケーション能力というものが伴っていない。今までのIVの時は、この二つの要件の一つを満たしていればよかったんです。だから、高機能自閉の人たちは大学にもかなりいます。役所にもいます。そういう人たちは情動性の問題は幼児期にあったのかもしれないけど、ほとんど克服してるんですね。ところが、人間とのコミュニケーション能力が足りないのです。

これも一つアスペルガーの基準だったけど、5になってから、これは両方を兼ね備えてないとアスペルガーとは呼ばないと診断基準が変わりました。徐々に変わっています。脳の微細機能の障害ではなくて、5では社会性のコミュニケーション能力の問題であるというふうに変わりました。

社会性のコミュニケーション能力は医学の領域で克服(治療)できるんですか、恐らくできないんです。これはやはり教育の問題だったんです。だから、私は40年間だまされたということですね。

アスペルガーと呼ばれている人たち、発達障害と呼ばれてる人たち、それは1万人につき、数としては4人とか5人のはずなんです。ところが、多くなったというのは、日本の場合は判断基準が緩めてしまった。医療領域で囲い込んでしまったけれど、それでは治せなかったということなんです。基本的には社会的なコミュニケーションの能力をどう育てていくかという一つの課題です。

それから、もう一つ今日お話しする問題。朝、皆さんこの会場に来られている時間帯だったんですけど、今日は国会中継がありますので8時15分から8時55分までだったんですけど、ネット依存の問題です。私はここに来るのが先に決まっていたから番組の構成だけをしてきました。もともと入れ歯がないからテレビに出たくないんですけど、ネット依存の問題というのが非常にこれから大きな問題です。これははっきりいいますと、アスペルガーなどの発達障害と同じようなだまされ方を医療の人たちにされるかもしれません。恐らくそうなるでしょう。これもやはり教育の問題なんです。本当は医療の問題ではありません。

2.ネットゲーム依存

今日、国立久里浜病院の樋口先生がネット外来という形で2年前から取り組みを中心にやっていますけれども、このネットの問題というのは、依存として考えるべきところもあるのかもしれませんが、教育の問題でしっかりととらえ直しをしていただけたらなあと思います。これも今後は非常に大きくなっていくと思います。

前置きはそのくらいにしまして、これが樋口先生たちの研究なんですけれど、実は私はネット依存の問題で本を2冊書いていまして、日本で一番最初に、この問題を本で指摘したんです。

その内容をNHKの番組クローズアップ現代でもやったんですけど、平成10年、もう15年ぐらい前ですね。私は毎日不登校の子どものカウンセリング、あるいは親のカウンセリングをずっとやっているわけです。平成10年の時に、どうも、この人は対人不安や恐怖がないんだけど、どうして学校に行かないのかなという人が登場したんです。

今まで、すごく不安とか恐怖感をたくさん持って、そのために動けなくて学校に行けなくなる人が、どちらかというと不登校の中心だったんですね。もちろん退学傾向の子も非行傾向の子もいましたけれども、私は専門領域として、そういう対人恐怖や不安の強い人の不登校のカウンセリングをやっていました。その時に、不安や恐怖を持ってない子どもが母親に連れられて、中学生、高校生なんですけど、カウンセリングルームに訪れるようになったんです。

私はフッと考えたんです。学校は勉強があるから大変だけど、学校に行くと、友達もいるし、仲間もいるし、楽しいじゃないですか、緊張や不安の強い子は楽しいとわかっているけれど、学校に行きたくても行かれない。登校しようとすると、不安感や恐怖感にさいなまれてしまって、おなかの調子が悪くなって、下痢をしたり、嘔吐、発熱があったりして行かれない。でも、ごくごく普通に見える子が学校に行かなかったら、楽しくないんではないと思ったんです。

そこで本人に聞いたのです。家にずーっといて、一人で「何してるの?」「楽しいの?」と聞いたのです。その当時、ラジカセにしても、ずーっと聞いてたら飽きるし、あるいはテレビゲーム、プレステーションをやっていてもクリアすれば終わりですね。新しいソフトを買っても2週間から3週間、一生懸命すればクリアして終わっちゃう。そうすると、また買うわけにもいかない、高額ですから。5千円、6千円しますから。それでは飽きるでしょうと聞いたわけですね。

いや、「家にいたって友達はたくさんできるんだよ。外国の友達もいるんだよ。飽きないんだ、仲間がたくさんいて何にも寂しいことも、つまらないこともないんだよ」と、子どもに言われたんです。中学生の子どもでした。それで、えっ、一体どういう世界なのということで、その人たちの話を聞いたんです。

私たちや先生たちが生きてるのは、現実社会の中で生きてますね、当然。現実の中で評価されたり、いろんな目に遭ったり、楽しいこともある。彼らは現実社会を逃避してしまって、仮想社会、バーチャルリアリティとそのころいっていました。バーチャルリアリティの世界にスポッとはまり込んでしまっている人たちだったんですね。その人たちが不登校に徐々になっていく。

その当時、国分先生のところの臨床心理士の全国大会にシンポジユームのパネリストとして呼ばれていききました。スクールカウンセラーが150名ぐらいいたかな?先生たちに申しわけないんですけど、挙手でアンケートをとりたいと…

従来日本の得意とするテレビゲーム、スーパーファミコンとオンラインゲームの違いがわかりますかと聞いたんです。そしたら、わかると言った先生は3人だったんです。みんな臨床心理士でスクールカウンセラーですよ。僕は壇上で言いました。もう仕事を辞めた方がいいですよ。子どもがやっている遊びがわからないで、どうやってカウンセリングができるんですかと偉そうなことを言ったんですけど、そのくらいオンラインゲームとテレビゲームは違いがわからない。まず、その辺を含めて理解をしていってくださいという形で言ったんです。

もう40歳ぐらいの人たちの話なんですけど、その人たちが中学、高校生のころ、ポケベルって皆さん知ってますか。外回りの営業人たちがポケベルをつけていた。携帯がなかった時代ですので、会社から何か用事があった時は、ポケベルに連絡が来るんです。ポケベルに連絡が来たら、公衆電話に行って会社に電話をかけて用件を聞く。そのために外回りの営業マンはポケベルを持たされていたんです。それをどういう分けか、中高生が持った。何をやっているのかというと、「あいうえお」という50音を1からABCと順番を振って、そして、その数字で友達同士の暗号で平仮名に直すことができる。それを送って友達も送るというやり取りから始まった。ポケベルの時代ですから、もうかれこれ30年、40年くらい。大人は普通のポケベルの使い方をするけど、子どもは遊びに使うんですね、遊びの天才です。

その後、PHSが流行、ショートメールの時代。さらには普通の携帯電話になっていく、それから、メール機能もついていく。今はPC、パソコンの端末の機種のスマートフォンの時代になってしまった。私たちはメールとか電話をするだけで仕事上に使っているけれども、子どもは遊びに使っていく。だから、方法論、目的論が全然違うということをまず理解していただきたい。

これは樋口先生たちの調査です。厚生労働省の研究班の調査、2013年7月に出した見解です。実は12年に調査を始めました。これはネットの調査だけではありません。生徒指導の先生たちもいらっしゃると思いますけれど、1996年から厚生労働省のこの研究班は喫煙、タバコの問題と飲酒の問題の全国調査を始めたんですね。高校生のタバコ、あるいはアルコール依存の飲酒がどの程度いるのかという調査を4年ごとにオリンピックのように4年ごと、やってるわけです。2012年、去年そこにネットの問題も入れて調査していきましょうということで、タバコ、飲酒の調査と一緒に、ネットの問題の調査が始まりました。その結果がこの7月に発表されました。

その分析結果について、私が今日「学びを語る」と朝日新聞のコラムに書いてありますけど、その件です。518,000人の中高生がネット依存という発表をして、かなりセンセーショナルに報道されました。そのうち、特に女子高校生の約10%が依存という報告なんです。飲酒、あるいはタバコ、両方合わせても、1996年から10万人の推移なんです。もちろん児童・生徒の数が減っているから、それに合わせて多少減少してるんです。実際タバコの問題で先生たちは悩まれているかもしれないけれど、大人がだんだん吸わなくなってきているから、子どもたちも少なくはなってきているんですね。若い大学生でも僕らの時代のように酒のばか飲みはしません。お酒もスマートに飲みます、今の人たちは。だから、それほど問題ではなくなってきた。何が今後問題になっていくかというと、その5倍の数字に当たるネットの問題を考えていきましょうということです。

この依存というのは、例えばタバコとかアルコールというのは物質による依存です。覚せい剤もシンナーもそうですね。だから、依存物質を取り込むことによって依存になっていく。その依存、これアディクションといって依存ですけど、日本の場合は全部一緒にしてしまった。やはり、元久里浜病院の精神科医の齋藤学さんが。物質の依存と買い物依存みたいな精神的依存を別ものだけど、一緒にしてしまった。立花高校の校長の齋藤先生も仕事依存だと思うんですけど、年がら年じゅう仕事のことを考えて、土曜、日曜もないような人も仕事依存。でも、アルコールは飲むけれど、仕事を飲んでるわけではないですね。精神的に仕事をしていないと不安になってしまう。そういう精神的な依存。これは買い物の依存だったり、仕事の依存であったり、中には恋人にふられるんじゃないかと思って性の依存になってしまうという女性の人たちもいます。本当は二つに分けなくてはいけない。

物質的な依存と精神的な依存。どちらかというと、ネット依存は精神的な依存です。物質的な依存はかなり治療が進んできていますけど、精神的な依存は心の問題ですからなかなか治療が進まないのが現状です。

この中高生のネット依存、ちょっと字が小さいんですけど、レジュメに使った尺度は、この8問の中に5問以上項目があると病的な使用という形にしています。これはキンバリーという女性の研究者が1990年代の初めに、アメリカの医者がさっき言ったDSMの依存の基準を使ってつくりました。だから、最初から依存に合うような基準をつくっていてどうなのかなと私は思うんだけど、樋口先生たちはそれを使ってこういう調査をしました。

5項目以上に該当し、ネット依存が強く疑われる病的な使用と認定されたのは8.1%に上っています。これは注意、警告をしなければいけない問題だということになりました。

次に、日本は子どもを消費者にする社会である。ネット依存の問題というのは、実は韓国と日本と中国とロシアの一部なんです。ほとんど欧米では大きな問題ではないんです。うまく適切な利用をしているんです。特にこの問題は日本が先進国です。どちらかというと、その代表的なものが、漫画、アニメ、ゲームなんです。普通の文学的な小説もバーチャルな世界を書かれています。漫画もほとんどバーチャルの世界を書かれているけど、小説というのは頭の中で想像して、自分で組み立ててつくる。脳を使っていくものなんだけど、漫画というのはそういう面では二次元なんですね。言葉も入ってくるけれど、画面も入ってくる。そういう意味では、影響力が非常に大きいんです。

日本はどちらかというと、そういう意味ではバーチャルな世界、仮想の社会に割と親しみやすい社会だったんだと思います。欧米人はなかなか理解できない。この間ノーベル文学賞の発表がありましたね。村上春樹さんがいつも候補に選ばれるんだけど、最終的には落ちるんです。なぜかというと、あれはバーチャルの世界で、漫画の世界だという形で評価が低いんです。純文学ではないということなんです。たくさん訳されて売られているではないか、売れてるじゃないかという評価はあるけれど、本来の文学ではないのではないかという批判が一部のジャーナリストの中にあって選ばれないと思うんです。そういう意味では、漫画、アニメというのは、楽しいかもしれないけど、もちろんクールジャパンで今から日本の売り物になるんだろうけど、小さい時から慣れ親しんでいるものです。そういう漫画、アニメ産業の隆盛をずうっと極めていって、それが現実にゲームの中で活躍するということですね。

少し前、7、8年ぐらい前までオンラインゲームは、ある程度パソコンのことを知っていて、人との交流が、チャットでありますから速く打てなければゲームの中に参加できなかったんですが、七、八年前、これは韓国のメーカーなんですが、ロッテオリオンズのメ-ンスポンサーで、メインスタジアムのマリンスタジアムには、オンラインゲームは○○と大きく書いてあって、試合中継では常にテレビに映るような仕掛けをする会社です。そこの会社が開発したメープルストーリーという、今はあまりはやってませんけど…。

それはまず漫画で流行らせる。小学1年生とか2年生などの硬派の月刊本での連載漫画です。次に、東京でいうと、東京12チャンネルというテレビ局があるんですけど、この地上波のテレビがメープルストーリーのアニメを作り誰でも見られるようにする。学習雑誌で見て、それから、アニメで見て、子どもたちははまっていくわけですね。

親に教えられた、あるいは学校でちょっと教わったパソコンの検索で、メープルストーリーと入れると、そのゲーム会社のホームページが来るわけです。メープルストーリーゲームの入り口の案内があるわけです。そこをクリックすれば、スーッとダウンロードされて無料でそのままゲームがやれるわけです。そういうはめ込む仕組みになっているわけです。だから、小学校1年生でも2年生でもクリックさえすればできる。でも、チャットができないじゃないかというと、その時代からボイスチャット、いわゆるスカイプと同じように、普通のゲームが電話をするようにチャットができるようになったんですね。

ゲーム人口が爆発的に拡大していく。そういうストーリーものが産業の中に組み込まれていったわけですね。テーブルゲームやカードゲーム、将棋等から電子ゲームの時代になったということですね。

私は引きこもりのニートの自立支援をやってるんですけれども、子どもの数、きょうだいの数がだんだん少なくなってくる。恐ろしいなあと思うのは、トランプがほとんどの子ができない。七並べやばば抜きもできます。でも、ナポレオンとかブラックジャックであるとか、頭で考えて何人かでやるというゲームはできない、やったことがないと言うんです。僕らの時代はお正月とかに親を含めてトランプをやったんだけど、ああ、この子たちは家族でトランプをやったことがないんだと、ほとんどが一人遊びのテレビゲームをやっていたということで、ああ、そういう意味では、子どもたちの遊び方が変わってしまったんだなあというふうに感じます。

最近登場したiphoneやスマートフォンはパソコンの端末機であり、インターネットに常時接続している簡易のパソコンです。これを使いソーシャルゲームのユーザーが急増しているということです。これは後から説明をしていきますけれど、インターネットに接続してゲームを楽しむというソーシャルゲームです。

ここにいる人たちが皆パソコンを持っていて、私がメーンのゲームを提供する会社だとしたら、不特定多数の方とつながって、そして、冒険や戦いを楽しんでいくというのが、ソーシャルゲーム。今までのテレビゲームだと、テレビをゲーム機と接続して、そのゲームの内容について遊ぶだけ。だから、一人遊びなんですね。ほかの人とつながってやるわけではない。パソコンのゲームというのは、皆さんとつながっていくということです。それも匿名性の他人とつながっていく。

ゲームは無料だけど、利用料やアイテム等の課金費用がかさみ、射幸心をあおるという指摘から「コンブガチャ」の規制を消費者庁が決定しました。これは去年の6月です。気楽に遊べ単純なゲームであるが依存性は薄いです。

私が心配してるのはこのソーシャルゲームという、今の段階のことなんですけど、iphoneとかスマートフォンを使ってゲームをしてるけど、まだゲームの内容そのものはレベルが低いんです。単純なんです。ただ、すごく射幸心をあおるような形でお金が落ちていくということは問題があるなということです。このスマートフォンがどんどん高性能化して、ノート型パソコンと同じぐらいのレベルになっていった時には、非常に危険なものになっていく可能性があります。

韓国では規制の中で、韓国もネット依存ですごく悩んでいるから、今スマートフォンは未成年は持ってはならないと検討しています。大人は持っていいけど、子どもは従来型のメールをするとか、電話をかける昔型の、私が持ってるような化石型のガラ系、こういうのはいいです。大人はスマートフォンは使います。日本は反対でしょう。中高生がスマートフォンを持って、大人は、新しいのを覚えるのは面倒くさいから古いのでいいやという感覚ですね。本当は、スマートフォンは大人は持っていいんだけど、子どもには持たせない方がいいんじゃないかということです。

このスマートフォンの問題というのは、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のコミュニケーション依存の問題があります。女子高校生はこの問題です。ラインもSNSです。不特定多数の人とお話ができる。チャットで、あるいはメールで、ずうっとお話をし続けてしまう。それがコミュニケーションの依存になってしまう。自分がメールを発信した。すぐに相手から返ってこないと、すぐ結果がほしい。また出し、またもらうというようなことを不特定多数の人たちと今やっています。その中で問題が起こる。この間、十八、九の女の子が、殺されて山の中で埋められましたね。あれもラインでつながっていた仲間同士の関係ですね。

3.依存性が大変強いロールプレーゲーム

いろんなラインの問題も、そういう意味での使い方を誤るといろんな問題が出てきます。それから、ゲーム課金、依存の問題で一番恐ろしいのを今日初めて言いますけど、ロールプレイゲーム、RPGというのが依存性がすごく高いんです。これは何かというと、たくさんの人とつながってゲームをするのですけれど、そこにポイントが入ってやればやるほどレベルが上がっていくんですね。レベルはゲーム内での社会的地位や立場をあらわしています。それをポイントであらわすことによるゲームは依存性が高くなるんです。

最終的にはアイテムを買わないと、アイテムを獲得しないとレベルが上がらないという仕組みになっています。そこに夢中になってしまうんですね。若い人たちがスマホでやっているゲームの中で、強くなりたかったら絶対にアイテムをゲーム会社から買わなければ強くならない。なかなか手に入らないからお金をつぎ込んで、ガチャガチャくじ引きで当たって、その番号を全部そろえたら最強のアイテムになる。それをもらうために、ずうっとお金をつぎ込んでしまう。だから、サラリーマンの人たちは大体スマホでゲームの好きな人たちは月に2万円から3万円アイテムを買ってるんです。

それらの人と一緒にパーティーを組む子どもたちは、月に2万円も3万円も買えないからどうするかというと、時間をかけてレベルを獲得して行くんです。サラリーマンの人たちはスーパーと同じで、今日はポイント4倍の日ってありますね。買い物をするとポイントが4倍になる、そういうアイテムをゲーム会社が売ってるんです。2千円か3千円で買うわけです。サラリーマンはいつでもこの金額は出ますね。それで1時間遊べば4時間分のポイントがもらえるんです。4時間分のポイントを毎日毎日もらってたら、中高生はそのサラリーマンの仲間に入るために、毎日4時間やらなきゃいけないわけです、そのアイテムを持ってないから。そういう仕掛けになってるんです。だから、RPGの中でアイテムを買わないと強くなれない仕組みがあるんです。

このRPGというのは日本のお家芸、スーパーファミコン、そういうテレビゲームの時代からロールプレーゲームが日本のお家芸であったわけです。こういうゲームが一番依存性が強い。例えばポイントを持ってどんどんそのゲームにお金を投資して道具をそろえていっても、ほかのゲームに転用できるのかというとできないわけですね。だから、そのゲームをやり続けるわけです。中にはお父さんがお風呂に入っている時に、クレジットカードの番号を盗んで、そして、お父さんに成りすまして、お父さんのカードでアイテムを買う。1ヵ月後、2ヵ月後、莫大な請求がお父さんにやってきて、これ何だとなる。これが消費者庁が非常に大きな問題にしたものなんです。これは不登校の子が圧倒的に多いです。金額が70万とか80万、お父さんは当然払いたくない。でも、息子を犯罪者にするわけにもいかない。いろんな問題が起こってくるわけですね。カードの番号さえわかれば。現金は割と管理するけど、カードの管理しますか、お風呂に入る時に。まして、家で。しないでしょう。現金なら2万円盗まれたなとか、また、子どもが持っていったなとかわかるけど、カードの番号を盗まれたら、その日はわかりません。請求が来なければわかりません。そういう仕組みになっています。だから、RPGというのが依存が強い。

同じインターネットゲームでも、例えば将棋、今日将棋やりたいな、将棋会館に行くの大変だなあ、雨が降ってるし、台風だし。でも、将棋がやりたいなと思った時に、パソコンに向かって自分と同じレベルの将棋相手を探してやることができるわけ。これは依存性がないんです。ゼロからスタートするでしょう。テクニックは自分が持ってるテクニックでしょう。将棋をさす。囲碁をさすテクニックは何かというと自分の能力でしょう。今まで勝ち取ってきたものでしょう。こういうものには依存がない。

ところが、テクニックは何かというと、アイテムだった。それもお金で買った。たくさん投資した。仲間がいる。これが依存なんです。だから、マージャンゲームとか将棋ゲームとか囲碁のゲームとか、こんなのに依存性はない。

もし、パソコンをやられる方だったら見ていただきたいんですけれど、これだけゲームが好きならプロになっちゃなさいと、私は進めるんです。韓国とかアメリカにはプロのゲーマーがいる。その人たちは依存症ではない。何でかなと思うんです。ぜひ帰ったらeスポーツというのを検索してみてください。このeスポーツというのが世界ではゲームの主流なんです。これはなぜというと、将棋とか囲碁と同じように、ロールプレイゲームではないんです。世界の大きな企業は世界大会になるとみんな協賛金を出す。ちょうどサッカーなどのトヨタカップなんかと同じですね。そのeスポーツというのは、戦いのゲーム、戦略ゲームなんです。要するにチェスと同じで、王様を落とせば終わり。4人とか5人のチームを組んで、どうやって王様を落としていくかという世界大会なんです。

今年も世界大会がアメリカでありました。賞金が億円単位。世界中の人が集まってきて、地区ごとの代表が集まって戦うんです。アメリカ政府が頭がいいと思うのは、eスポーツというのは戦略ゲームだけど、本当は体操をやったり球を投げあったり、取ったり打ったりとかというゲームと違うんですけど、それだけの賞品が出るから、プロのスポーツの一つと同じビザが下りるんです。なぜかというと、賞金がかかるから、賞金を取った時に税金をどう取るか。もう公式のスポーツなんですね。

日本人は、これは全然できない。ゲームオタクにこれをやれと言うとみんなできない。ロールプレイゲームばかり。なかなかプロにはなれない。これはeスポーツがゲームの主役。これは何かというと、アイテムでテクニックを争うのではなくて、自分たちの技能と戦略で争うんです。だから、スポーツと同じですね。それをコンピューターの中でやるというゲームなんです。会場は1万人ぐらい入るんです。でっかいスクリーン画面で2チームが出てきて、それぞれ戦うんです。みんな観客はそのでかい画面を見てるんです。そういう世界もある。それは依存性がほとんどない。やはり依存性のあるものとないものというのを考えていかなきゃいけないということです。性犯罪や、逆に悪ふざけもこのSNSの中にはある。これがネットによるいじめの問題とつながっていきます。

そういう意味では、不登校、引きこもりになる。PC、パソコンの場合、ロールプレイゲームにはまってしまうと、深夜に盛り上がりますから朝起きれない。学校に行けない、あるいは無理やり起きて行くけど、1時間目、2時間目に授業に出るけど、3時間目以降は保健室で毎日寝ている。お昼ごろになって弁当を食べて、午後の授業は出るけど、家に帰って一眠りして、8時ぐらいからロールプレイゲームをやり始めて体調が悪くなるというような人たちが実際多いんです。はまり出すと5年、6年。PCの問題というのは、そのくらい、ネット、スマホと違って深い深いゲームの依存性を持っているということです。

オンラインゲーム、ネットゲームとは、不特定多数の参加者が(1万人規模のゲームがある)がインターネットの中にある仮想社会で遊ぶゲームです。そこには仮想空間と仮想現実があり、人間関係、キャラ関係、家族、恋人、憎愛(愛と憎しみ)、利害関係も存在する。テレビゲームと違うのはエンドレスゲームです。テレビゲームは一人遊びですから、クリアしてしまえば終わり。ところが、オンラインゲームというのはエンドレスゲーム。ゲームがどんどん更新されていくわけで、どんどん新しくなっていく、こういうゲームです。だから終わりがないんですよ。ゲームの配信会社の経営は、10年ぐらい前まではこの課金システムでした。1ヵ月1,500円ぐらい、ローソンなどで電子マネーでお金を払って1ヵ月無料で遊ぶ。この時代はそれほど依存はなかった。

パソコンは基本的にお金がかからない社会なのに、何でゲームではお金を取るの?という批判もありまして、みんな変わっていったのがアイテムの販売、そういう魔術とか武器、防具であるとか、それをゲーム会社がユーザーに売って、その経営をしている。あるいは同じアイテムを二つ獲得した。例えば、斧が二つある。二つは要らないから一つはゲーム会社に売りましょうというような商売をしてる人もいる。人が斧を千円でゲーム会社に売る。その斧はゲーム会社がサラリーマンに2千円に売る。ゲームをする人にも千円入り、ゲーム会社にも千円入るというシステムです。今はこの課金システムとアイテムの販売です。このアイテムの販売というのはRPGのゲームだけです。

将棋とかマージャンゲームにはありません。さっきお話したeスポーツにもありません。パソコンやプレステーションで遊ぶ世界的なゲームです。プレステーションでも今はオンラインすることができますから、プレステーションは、ファイナルファンタジーなどはオンラインでやる進化をしています。プレステーションでも遊ぶことができますということです。

4.現実と同じ3Dの世界の恐ろしさ

オンラインゲームとソーシャルゲームの違いをもう一度明確にしておきます。オンラインゲーム、ネットゲームの問題点としては依存性が非常に高い。一度はまると抜け出るのに数年かかる場合が多い。興奮し暴力行為がしばしば起こり、思春期の子どもの残虐性や性、暴力に対する規範意識が崩れる場合も多い。ゲーマー同士で詐欺、横領等も起こることもある。荒川沖事件というのがあるんです。連続通り魔、二人死んだのかな。この人は今年死刑になりました。お父さんは中央官庁の職員でした。この人は高校のころからゲームにはまって、高校は何とか卒業させてもらったけど、就職も大学にも行かず、ずうっとゲームにはまり込んで、父親はいろいろお説教を繰り返すんだけど、没頭してしまいまして、ゲームの世界で非常に有名だったんですけど、おれだってやればできるんだと、困ったことに、ナイフを持って駅前の人を刺し殺して重症を負わせたという事件ですね。この人は死刑になる前は、「早く死刑にしてくれ、おれは向うの仮想の社会の帝王になる、王様になるから早く死刑にしてくれ」と言ったんですね。24歳かな。その人の起こした事件。

この人は完全にゲームの世界、現実の世界と仮想の世界が区別ができなくなって混沌とした人になってしまったんです。こういう事件が起こっています。それは3Dです。例えばサバイバルナイフの雑誌を見ていたら非常に使いたくなるから危険だというような指摘もあります。昔、宮崎事件で宮崎勤といったかな、幼児を殺して食べてしまう。幼児が3人か4人亡くなってますね。そういう事件が20何年前に起こりました。あの人はホラービデオを含めて、残虐なビデオをずっと見続けていた。基本的には、あの人の場合は多重人格性の人格障害だったんですけど、この人も死刑になってますけど、ビデオはまだ二次元なんです。今のゲームは三次元なんです。脳は現実と区別がつかないんです。私たちがここに来てるのは三次元ですね。ゲームの中の世界はもう三次元なんです。興奮したり、悲しい、つらいという思いも、脳は現実と認識がほとんど変わらないんです。

ゲームなのか現実なのか区別がつかない人間が、これから非常に増えてくるかもしれません。これは少し、一日30分とか1時間程度遊んで、あとは現実の世界の中で活躍してるのは全然問題ないんですよ。仮想現実の中にずうっとい続けた場合は、非常に危険なんです。そういう事件も起こっています。それから、不適切な性の問題も起こります。さっき言ったボイスチャット、簡単なダウンロード、パソコンの高性能化によってどんどん低年齢化が進んでいます。さっきのスクールカウンセラーと同じように、親たちがパソコンのことに弱いんですね。インターネットのことが弱いんです。よく理解していないことが多いです。

日本社会でのインターネットの利用についてのほかの問題点としては、パソコン、携帯電話の急速な普及によって、法律が追いついていないということです。それから、匿名社会の出来事として、無責任な使い方、誹謗、中傷、いじめ、脅迫等が起こる。日本では匿名社会が世界一進んでいます、インターネットの中では。だれが何をどういうふうに言おうがインターネットの中ではわかりません。パスワードさえつくれば、何人もの人間になれます。あんなに問題が起こってる韓国だって、国民背番号制を使ってますから、だれがどういうアクセスをしててるのか全部わかる。アメリカでも、中国でもわかります。日本だけわからない匿名性なんです。だから、当然携帯電話やスマホを使ったいじめという事件がどんどんひどくなっていくということなんですね。いや、フィルターをかければいいでしょうといっても、フィルターはゲーム会社、ネット会社がつくってるから、全部すり抜けるようになっています。だから、どこまで信じていいのかわからない。

3年か4年前に、「親は知らない」というキャンペーン記事を、読売新聞が取り上げ、インターネットの網の問題を取り上げました。私も何回かいろいろ話をしたり情報をあげたりやりました。ほとんどフィルタリングというのはゲーム会社やインターネット会社がやっているから、つくった者がやるわけですから、必ず通り抜けがあるということですね。第三者がつくってるわけではないから。フィルタリングはその辺のところが有効ですけど、過信すると非常に問題が出てくると思います。実は都市より地方の方がネット依存の子どもや若者が多い。東京などはオタク系の人たちが集まる秋葉原に簡単に行けますね。でも、地方の人が秋葉原に行くとなると交通費から時間からかかるわけです。その点、ネットの社会というのは、電源入れてクリツクすれば、すぐどこでもリアルタイムでつながってしまいますね。そういう意味ではオン・ディマンドだから、どちらかというと、地方の方がネット依存の子どもが多いんです。

5.ネット依存の背景

ネット依存になる背景としては、漫画とかアニメとかは割と社会的には進んでいる国です。それから、子どもを消費者として見ていく社会である。そういう意味では、子どもや若者の健全育成ということに対して、あまり熱心でない国です。子どもの健全育成のためには、何が何でもみんなで規制していこうよという欧米のシステムとは随分違っています。

要因としてこれは大きいと思うんですけど、人間関係がどうしてもどんどん希薄になっていく。寂しい、だれかとつながりたい、でも、現実の世界だと隣の人がどういう人かもわからない。学校でも、クラスが変わればお友達も変わるというような、人間関係の取り結び方が今の若者は下手くそです。そういう意味では、希薄な人間関係が要因になって、ゲーム好きのネット依存の人たちができてきます。どちらかというと、現実社会で嫌なことにあった人が多いんですね。だから、どちらかと言うと、現実社会を回避して、ネットの中に入り込んでしまう。学校でいじめを受けてだれにもわかってもらえなくなって、学校が怖くなって行けなくなって、毎日何をするかというと、ネットの世界にはまり込んでいく中高生がかなりいるんですね。そこの方が居心地がいいと感じた時がすごく長くなるんです。しかし、現実社会でしか人間は成長できないんです。仮想の社会の中に何年いても成長はできないんです。そこが現実と仮想の違いなんです。

これは総務省が出したインターネットの契約利用数です。モバイル、約国民一人に1台の時代ですね。ブロードバンドの契約は平成20年から少しずつは増え、1万件を突破したのです。これは厚生労働省の今年の8月1日の発表なんですが、中学生、高校生は平日の時と休日の時に分けています。意外と多いのが高校生の女性、平日で5時間以上です。男の子も平日で5時間以上の人たちが13%ぐらいいるということですね。高校になるとグッと増えると言われています。休日を見てください。この高校生の女の子、これが22~23%、5時間以上。だから、女子高校生で、さっきの10%という数字を上げていったのは、ここが大きな要因です。基本的には、女子高校生の場合はゲームの依存ではなくて、コミュニケーション依存。だから、ラインとかミクシーとか、そういうものを使ったコミュニケーション依存になってしまうということです。本当のオタクの人たちはゲームをやりながら、また、みんなでラインに入って、スマホや携帯で情報を取りながらゲームを一緒にやり続けるという人たちも最近は多くなってきているということです。インターネットの休日の使い方で5時間以上、大体10時間とか12時間、起きてる間はほとんどやってますよという人が22~23%もいるということです。だから、休日の使い方をどうしていくかということですね。

なぜインターネットに惹かれるのかというと、日本では匿名の世界、責任性の伴わない自由な世界である。気軽、低コスト、好きな時に好きなだけ、制約のない世界、不可視社会、これはいじめと同じですね。大人たち、先生たちの目の届かないところでいじめが起こる。それと同じように、インターネットも不可視空間です。現実は可視化社会だけど、どちらかというと不可視社会であり、秘め事意識がある。それから、自分の意見や感想に対して素早いレスポンスが楽しいということです。だから、何か書くと、すぐいろいろの会話がポンポンと飛んできてくれる。それが非常に楽しい。それから、不特定多数の人とつながる意識が非常に大きい。これはどちらかというと、孤立感とか自己有用感の少ない人たちが不特定多数の人とつながる意識が非常に大きくなる。だから、自己有用感が強い人は、こんな不特定多数の人とつながろうと思わない。

教育の目標としては、できれば孤立感を防ぐと同時に、自己有用感が持てる生徒をどう育てていくかということが、このネット依存を防止する一番の大きな目的だろうと思うんです。それから、今を楽しむ。生きる感覚が仮想社会にあると考えている人たちです。現実社会にはない。引きこもりではなくて、開き直ってこもる人がいる、ネット依存でこもっている人の中には・・・。

6.ネットの魔力

それから、魔力の1、なぜはまり込むのかというと、現実社会の人間関係に必要以上に気を使う。これ気をつけてくださいね。現実社会の時に人間関係の能力が希薄なために、いざ現実社会に行くと必要以上に気を使う。ちょうど不登校の子どもが、時たま学校に来て非常に気を使う。そして、過剰適応して疲れてしまって次の日に来れなくなってしまうのと同じように、現実社会の人間関係に必要以上に気を使う人は注意しましょう。

それから、気が弱いから面と向かって何も言えない人、あるいは意見を言ってもいいが、後々トラブルになるかもしれないと恐れる人。何でも言い合える友人が少ない。自分の能力から考えて、現在の立場や仕事に不満がある人。それから、自由になる時間が多くある人。元来のゲーム好きの人。整理整頓が苦手。何でも面倒くさい、かったるいなと言う人。こういう人がゲームの中にはまり込みやすい人です。だから、生徒の中に前提条件でこういう人がいると、どうやって部活に誘おうかとか、みんなで何か楽しいことができないかなあというような、いわゆる呼び込みをやってほしいんですね。

孤立にしていって自己有用感がなくなれば、どんどん仮想現実の方にその生徒は持っていってしまいます。魂がそちらの世界に行ってしまうということですね。そんな人にネットの魔力は襲う。時間や空間に関係なく、気軽に共有することができる仲間と集まれるということです。現実社会は、時間、空間がありますね。でも、それがないんです。24時間集まれます。話の進展が早く自分の知らない情報を取得できる。あるいは、ネット内でも友人やゲーム仲間がどんどん増えて意気投合する仲間が多くなる。これはゲームのことだけです、好きなことだけです。

リアルの世界だったらゲームのことだけを話していませんね。いろんなことを話しますね。勉強のこと、友達のこと、恋愛のこと、あるいはプロ野球のことだったり、そういういろんな話があるんだけど、オタクの集まりというはオタクの話しかしないのが鉄則です。交際範囲がスカイプであったり、ツイッターであったり、ラインであったり、SNS、そういうソーシャルネットワークサービスであったり、ネットゲームであったり、大規模のRPG、これをMMORPGと呼んでいますけれども、多人数参加のオンラインロールプレイゲームのことをMMORPG等に広がっていきます。だから、スカイプとかツイッターとかラインをやっていきながら、そういうソーシャルネットワークサービスを受けながら、ネットゲームやRPGに入っていく人たちが非常に多いということです。次々に段階が上がっていくということですね。

私はネット依存について、どういうふうに考えているかというと、日常生活において生理的欲求以外はインターネットに心を奪われている状態の人と考えています。ネットをしない時でもネットのことばかり考えている。ネット以外楽しいことはない。他人との関係はネットだけ。ネットの人間関係は現実の人間関係より大切だと思う。現実の異性にはあまり興味がない。それから、ブログやチャットのことが気になり、つい見たり参加したりする。昼夜逆転の生活が中心になる。だから、現実の彼女よりも、ネットの中にいる彼女にあこがれてしまう。それが好きになってしまう。アニメに出てくる登場人物の方が性的魅力を感じるというばかなことを平気で言う人たちがたくさんいるんですね。それがカラオケでありますね。かわいらしい女の子が歌う立体画像に1万人の人が集まる、そういう時代ですね。そういう我々中高年ではとても理解できないような若者も現実には増えているということです。

ネット依存から起こる問題としては、さっきお話ししました国立久里浜病院の樋口先生の調査ですけど、身体面では、視力低下、運動不足、腰痛、低血糖、エコノミー症候群。精神面としては、引きこもり、昼夜逆転、睡眠障害。それから、学業や仕事は、成績の低下や遅刻、居眠り(授業中や勤務中)、留年、退学、勤務中に関係ないネット使用などが問題になってくる。経済面では失業、無職、浪費、借金。5番目、家族や対人関係において家庭内暴力や暴言、浮気、離婚、育児の怠慢や放棄、人間関係の悪化等があります。

この間、24歳の女性、無職です。1ヵ月くらい前かな、愛知県で起こりました。まだ10ヵ月の子どもを育てていて、その子がおふろの中でおぼれて死んでしまったんです。お母さんはネットのことが気になって、おふろの栓を抜いて、まだ完全に水が抜けてないけど、おふろの中で遊ばせる遊具がありますね、10ヵ月の子につかまり立ちさせて、そして、遊具を水に浮かべて、おふろの栓を抜いたからもういいだろうと思って、自分はさっさと体を拭いてネットをやっていた。ハッと気づいて40分後、遊具が排水溝に詰まって、水が残っていて、その子が足を滑らせて溺死。こんなこと考えられますか。そういう事件が起こった。

それから、痛ましい事件でしたけど、大津のいじめ自殺事件、あの三日前に僕がもっと重要としてる事件が起こった。これはどこかというと、同じ大津市です。29歳の女性、4人子どもを生んでるんだけど、一人の子どもしか生きてなくて、あとの3人の子どもは死んでしまったわけです。一人はマンションから落ちて死にました。一人は病気で死にました。養護施設に行ってる子だけは助かりました。事件の発端になったのは、まだ3歳にいってない子どもが高熱を出した。なぜか不思議だけど、大津の不登校の中学生がその子を世話してた。女の子ですよ。心配だから見にいった。お母さんはずっとパソコンに向かって、20何時間チャットをやってた。僕も見たけど、英語ですよ、それ。フランス人の恋人がいるの。働けよ、英語ができてフランス語ができるなら。生活保護。高熱で、肺炎で子どもが亡くなったと気づいたのは、不登校の中学生の子どもが訪ねてきてくれた時に、変だよ、おばちゃんと。そういう事件があった。大津の事件がその後起こったので、あまり世間では注目されていないけど、そういうはまり込みの世界というのが現実にはあるんですね。ちらほら日本でも現実には起こっているんです。

さっきの荒川沖事件の時も、僕も注目したんだけれど、産経新聞という新聞社だけがオンラインゲームをやっていたと書いてくれた。あとは、皆テレビゲーム。新聞社の人もオンラインゲームとテレビゲームの区別がつかないんだなあと。テレビゲームはそんなに危険なものではありません。オンラインゲームは人と人がつながっていくから、人と人の交流のコミュニケーションだから依存性が強いんですね。そういういろんな問題が現実には起こっている。ここが一番のポイント、これが直すために一番重要な要素。

現実社会の人間関係よりもネット社会の仮想現実の人間関係の方が大きいという人は、これは長期化する要因であるけれど、これを逆向きにすればいいことなんです。ネットの仮想社会よりも現実社会の方が楽しいんだよということを教えてあげることによって変わるんです。これは教育の力だと思うんです。家に帰ってネットゲームはおもしろいかもしれないけど、みんなで楽しく部活をやって、いろんなことに挑戦していこうと、その方がおもしろいなあと思ったら、堅実なんです。ネットなんかにはまり込みません。

それから、現実の社会的評価、仮想の社会的評価、こちらの方が上なんですね。不登校で学校に行ってなくてネットゲームにはまり込んだ。1年も2年もしたらみんな忘れちゃった。勉強もわからなくなった。体力も低下した。昼夜逆転だ。いいことは何もないんです、現実社会にはね!しかし、その人たち、ところが仮想の社会では、自分が兵士を100人とか指揮してたり、抱えていたりするわけです。すごい能力を持ってるんです。みんなに評価されて、みんなに尊敬されてるんです。そこの方が居心地がいいんですね。そういう社会があるんです。これを逆向きにしてあげてください。どうやって逆向きにするかは、一人ひとりの教育指導法はあると思いますけれど、現実の社会的な評価が上がれば、仮想の社会が下がります。さらに、ネットの社会は責任性がないんです。現実社会は当然あります。あるから本当はおもしろいんでしょう。ないから、本当はおもしろくないはずなんです。そういう責任性のない社会です。こっちは現実社会が楽しくないんです。仮想現実の方が楽しいんです。現実社会では仲間が少なくて、仮想社会の方が仲間が多い。ここの不等号の向きを全部逆さにすることがネット依存から抜き出る方法です。

医療では直せません。それはそうでしょう。5年も6年もネット依存だった人が1ヵ月入院して、また同じ環境のところに戻ったらどうなりますか、同じです、繰り返しです。そのためには、人間関係能力もつけなければいけないし、現実社会が楽しいということも教えなければいけないし、何かその子の特性に合った仕事を、向きを探してあげて、指導し、必要な資格を取らせていくことが大切です。

その人の特性に応じた能力を育てること。そして、実際に学校とか会社とか、そういうところに居場所ができて送り込んで上げられる。そこまで支援しないとネット依存は直らないんです。私も久里浜病院の樋口先生に聞きました。病院はそこまでできるんですかと。できません、1ヵ月お預かりするだけです。直りますか。直りません。

韓国で不登校の子どもにネット依存が多い。だから、3週間、いわゆるレスキュースクールというものがつくられました。これは富山でやっているものをモデルにしてつくられていたけど、3週間では直りません。どうするかというと、ビァサポートとかユースサポーターの人たちが毎日のように家庭訪問しながら、お話し聞きながら、学習支援も含めて、あるいは学校の先生との連携をやって、細かく面倒をみていってつながるんです。行かなくても、韓国には徴兵制がありますので、そこでやむを得ず2年間生活するわけです。そこで直ってしまう。

日本の場合は直らないから、引きこもりの全国大会がこの9月にありました。約500人か600人の各地域の代表の人が集まりました。平均をとりました。もう35歳でした。40歳、50歳の引きこもりがぞろぞろ日本では出てきている。20年引きこもったという人がたくさん出てきています。不登校だけではなくて、大学を出ました、それから引きこもりました。今カウンセリングしている福岡の人は、大学に行きました、医学部を卒業しました。医者の国家試験に受かりました。だけど、医者の病院での研修中に人間関係がうまくいかずに引きこもりました。それから6年経ちましたという人。何とかもう一度医者に戻してあげようと思って、明日カウンセリングするんですけれど、ああ、もったいない人がいっぱいいます。うまく機能させてあげる。今の人たちはほとんどがネット絡みです。単純な不登校はほとんどいないんです。いろんな発達障害も絡んでるけれど、ネット依存も絡んでる。それから、今続々出てきているのが、隣の県に早稲田の学校ができたでしょう。あそこが多くて、東京からも来てるんですけど、何があるんですか、あそこ。今、何人か相談しているが、どうしてなのかなと思うんですけど、もともと早稲田学院、慶応も多いんですけど、非常に問題が多いんだなあと思います。

では、ネットをやめちゃえばいいじゃないかというと、新見南吉さんのおじいさんのランプじゃないけど、これは村に電気が引かれるのに反対したランプ売りのおじいさんのお話しなんですけど、小学校の教科書にもありましたね。インターネットは危険だから反対すればいいというと、おじいさんのランプになっちゃう。そうじゃない。やはりインターネットと共存していかなきゃいけない。そこに私たちの苦しさがあるのではないかなと思います。

SNSとは、社会的ネットワークサービスをインターネットで構築すること、狭義のSNSとは、人と人のつながりを促進サポートするコミュニティ型会員サービスのことであるということで。これが今、フェイスブックもそうです、グーグルプラスもそうです、マイスペースもそうです。日本ではミクシーとかグリーとかモバゲイとか、そういうものもみんなそうですね。それがすごく増殖しているというか、すごい利益を上げてプロ野球球団まで買収してしまう時代になっていっています。こういうものが現実にどんどん迫ってきてるけれど、便利さのよさもあるんだけど、それをどう利用しながら問題点をみんなで克服していくかという時代になっているのだろうと思います。

繰り返すようになりますけど、ネット依存にはまりやすいタイプとしては、人と人との関係を何となく疎ましく感じる、知らずに引いてしまう、おっくうである、何となく不安である、こういう生徒がいたら、やはりどうやって現実に戻していくかということを考えてください。しかし、一人でいると、むなしさや寂しさを感じる人です。

ネット依存の対応としては、ネットゲームは依存性の強いゲームであるという認識を、社会・本人・家庭・学校が持ってください。何かの集まりの時に、やはりオンラインゲーム、ネットゲーム、RPG、ロールプレイゲームはオンラインでやると危険ですということを、先生たちは認識していただいていると思いますけれど、さらに強めてください。

オンラインゲームはやってない、RPGのものをやってる、あれはネット依存性があるから注意しよう、ぐらいのことを親にも警告してください。それから、親はネットが引かれると環境整備をついつい行ってしまいます。パソコンは新しくないといけないよと、すごく高性能なものを買ってしまう。無線ランがいいね、配線しなくていいからですかね、どんどん買い与えて環境をよくしてしまう。その環境のいい家庭であればあるほど、ネット依存はひどくなります。子どもに与えるパソコンは、親が使った五、六年前の中古でよいはずなんです。特別の勉強をする人以外は、普通それで十分です、高校生ぐらいまでは、18歳までは自室にインターネットを接続できないようにしてください。無線ランも家庭では使わないでください。それから、大学でもディスク型は使わずノート型パソコンにしてください。最近はノート型パソコンでもディスクトップと同じくらいの性能が出てきていますから時代遅れだなあと私も思っています。なるべくインターネット、情報処理などの勉強をする以外は、旧型の低性能の物を買い与えてください。接続回線も大容量の情報を素早く送れる光りケーブル、ほとんどもうこれになってしまっていますけど、ADSLみたいな昔のものでいいです。大容量を送る必要はないということです。ネット依存の人たちはこれが多いんだけど、パソコンを2台持って、さらにハードディスクをくっつけて増設してやっています。そのぐらいじゃないと戦闘能力は上がらない、ほとんどが戦闘ゲームですからね、殺し合いですからね。ご丁寧なことにYou Tubeでその実況中継をずうっと映し出しているのもありますから、やらなくても。ゲームをやってるわけじゃないけどYou Tubeでゲームをやってるところを映し出してずうっと提供している愚か者もいます。それが楽しいのかなあ、不思議な人たちもいます。

彼らの抱えている問題としては、人間関係のスキル、会話の幅が一方的である。非言語を含めたコミュニケーション能力が乏しい。経験・体験の不足がある。自信がないため現実逃避、これは傷つきたくないということです。回避行動、私事化の優先、私ごとを優先する。アスペルガー傾向の人たちが割と陥りやすい。アスペルガー傾向の人がネット依存になると直していくのに非常に困難になります。

ネット依存が長くなると思考の視野が狭くなり、他罰的、攻撃的な言動が多くなります。12時間戦いばかりやってるわけですから、頭の中で立体的な空間でやってるんですよ。他罰的というのは自罰的の反対ですね。責任はすべて他者に持っていく。こうなってくると社会適応が難しいです。思考の視野が狭い、他罰的、攻撃的、こういうのでは大人の社会に受け入れてもらえませんね。

それから、ネットの情報(リテラシーされてない情報)に操作されやすくなる。例えば日本で有名なのは、韓国人に対する攻撃、中国人に対する誹謗・中傷、これをまた学者があおって、どんどん増長させてることもある。もっとリアルで韓国や中国に行っていろんな人の国際交流をしていったら決してそんなことはないとすぐ気がつくはずなのに、狭い視野で、パソコンの中だけでそんなやり取りをやってる若者がすごく多いです。リテラシーされてない、編集されていない情報ですから、それが活字なら正しいと思い込んでるところがあるから始末に悪いんですね。一種のマインドコントロールされているかのような行動を起こしていきます。それから、快楽主義傾向が強くなる。そうすると、ネット依存が進む。

快楽主義というのは、人を支配するというような状況が強くなってくるわけですね。昼夜逆転・不規則な食事や生活のため体力が極端に落ちる。しかし、自分のゲーム内でのキャラクターは、勇者やだれにも負けないスーパーマン、現実の自分との大きなギャップ「現実社会は仮の姿であり、ネットの自分が本来の姿である」と。ネットの中でのキャラクターはすごいスーパーマン、現実社会の自分、あまり価値のない人間。スーパーマンに当然あこがれる。そのギャップの中に苦しんでいくということ、後になって気づくということです。

7.ネット依存から抜け出すためには

これに対する依存からの克服というのは、まず一番としては、現実社会の人間関係を豊かにし、仮想の社会の人間関係を徐々に少なくしていくということがすべてです。そのためには家族の会話を多くしてください。家に帰ってまず会話、うるさいなあ、一々うるさいんだよ、余計なこと言わなくていいんだよと、ほとんど口をきいてくれなくなりますけど、とにかく家族の会話を多くしてください。ゲームのことしか話ししない。

ほかの話しは拒否する(避ける、話も面と向かうことも)場合は、ゲームをやめさせようとすると、暴力や拒絶がますますひどくなり、親子関係に大きな拒絶が入り完全に対応できなくなる。そんな場合は、相手の懐に飛び込む必要もあります。だから、彼らがやってるゲームの社会の中の世界を、親が、あるいは教師が、一時は受容しなければいけない。

彼が入っている世界は一体どうなの、どんな世界なのと。私も実は彼らに教えてもらったんです、オンラインゲームね。そんなこともわからないのとばかにされながら。私が書いた「ネット依存の恐怖」という本が、もう10年も前の本ですが、いまだに売れてるんですけど、まさに教えてもらった。クロースアップ現代に出てきた男の子は、去年インターネットのプログラムの日本一になりました。NHKの福祉ネットワークに高校生登場で出てくれました。もう27歳になるけど、現在は大学を卒業し、大手ソフト開発会社に勤めている。一番多くの作品をつくりました。

一番駄目だった、何回やっても、何回家庭訪問してもなかなか会えなかった。中学時代は知ってて、自分のところから高校に行かせると絶対ゲームセンターにはまり込むから、岡山県の寮のある学校に入れて、その時は部活等をやって現実社会を楽しんだんだけれど、大学は推薦で行ける学校に行けよと言うと、いや、僕は先生が昔言った会津大学で情報工学を学びます。会津大学は公立大学で町おこしのためにつくった学校なんですけど、英語で半分授業をやる。でも少し勉強しなきゃいけないんですよ。予備校に行ったら2週間で辞めてしまい、ネットの社会にはまり込んで6年間、それを何とか呼び出そうと思って、僕も彼がやってるネットの社会に入ったけれど、私は一兵卆、彼は天皇、会って話しなんかしてくれない。困ったなあ、この人と思って、ちょうどNHKで「福祉ネットワーク」という番組をつくった時に、何とか口説き落として、うまくいかなった例。

そこからいきなり今度は出てきたら、台湾の中山大学という孫文がつくった大学に入れたんです。そしたら、中国語を1年で勉強して、2年目からは学部に入れて、1年、2年、3年と順調にいったんだけど、3年になって挫折して帰ってきた。何でかというと、インド人の優秀なやつがいっぱい来て、もうかなわないや、自分はきちんと数学を勉強してなかったから。ああ、そう。でも、そのシステムエンジニアの勉強して中国語がしゃべれるようになって、インド人の友達もできたんだったらと言うと、インド人の友達は少ないと。僕はそれが狙いだったんで、どういうことと言うわけです。次に何をやったらいいんですかというので、基金訓練で会計学を勉強しろと言って、会計学を勉強させた。何が目的なんですかと言うから、君の人生は恐らくシステムエンジニアは無理だ、中国語はしゃべれる、インド人の友達がいる。あとは、会計学をやれば経営者になれると。まずやることがないからはまってしまった。経営者にはなれなかったけど公認会計になりました。プログラミングもできるし、中国語がしゃべれるから、今中国のお客さんがいっぱいいるから、経済的なトラブルがいっぱいあるでしょう。のめりこみやすい人でしょう。やはりのめりこむと一生懸命勉強するんですね。だから、能力のある人が結構いるんです、うまく引き出せば。それから、環境整備をしてあげるとか、うまくいくはずなんです。そういう意味で、これからのことも含めて話をしていく。僕はうまくいかなかったけど彼らにゲームを教えてもらった。ゲームを教えてもらって、最初はコミュニケーションをつくりながら徐々に変わっていってもらったということです。

それから、本人にはネット依存になっているという自覚がありません。アルコール依存の人たちが、自分はアルコール依存だと思っていませんね。アルコールが勝手に自分に寄ってきてると思ってますからね。そういうふうに僕も解釈してるんですけど、基本的にネット依存になっているという自覚がない。そのためには、ネット依存度をチェックしてください。パソコンや携帯電話の使用に関して、1から10まで項目があります。

これは私がつくった項目です。必要以上に着信情報の確認をする。夜も電源を切らない。一日3時間以上使用する。現実社会よりも仮想社会に友人が多い。情報はマスメディアのリテラシーされたものより、インターネットのサイトで知る。テレビニュースを見るよりも、2チャンネルのニュースを見てるやつが多いから。それから、いつでもパソコンや携帯電話のメールを気にする。会話中もメールが入ればそちらを優先し返事をする。暇な時はインターネットで時間を費やすことが多い。朝起きるとテレビやラジオをつけることより先に、携帯電話やパソコンのメールの確認をする。

ネットゲームをすると夢中になり、ほかのことに関心がいかなくなる。そういうので、高校生、中学生、10問中7問が当てはまったら、あなたはネット依存だと言ってください、宣告してください。このままいくと危険だよと。4問から7問、注意が必要。3問以下なら問題ないよということです。これは私事で、仕事でというと私もネット依存です。一日10時間ぐらいパソコンに向かって何かやっているんだから。カルテを整理したりするのは全部パソコンなので。ネット依存や注意が必要な場合は本人に告げる。最初に自己規制を迫ってください。本人に任せる。一日何時間、週何時間と決めてください。できないは場合は、保護者規制になることを書面で確認してください。

大体2週間やってチェックして、できた、できない。できなかったら、今度は保護者規制に入るよ。お父さん、あるいはお母さんがあなたの規制、干渉するよと。それもできないは場合は、第三者、家族以外の人が規制に入りますよと。これは学校の先生も含めて。さっきの一日何時間やりましたたかというのを申告書に書いて、お母さんに見せて間違いないと。先生に学校で見せて、これはオーバーしてるねと。オーバーしている場合は、さっきの久里浜病院とか、あるいは専門機関で宿泊をやっている、これは私のところしかないんだけれど、そういうところで何らかの対応をする必要がある。4番目に、専門機関での生活は3ヵ月以上いないと駄目です。もう3ヵ月では満たされなくなった。何で3ヵ月かというと、前はインターネットゲームを3ヵ月アクセスしないと過去の記録が消えたんです。だから、3ヵ月にしてた。しかし、3ヵ月と、いっても、前の自分の履歴を証明するものがあれば、いつでも復帰できるというシステムにゲーム会社が変えて、嫌な会社だね、ああいう会社は・・・。

さっきのメープルストーリーだって親も心配になって、メープルストーリーとパソコンで入れてホームページを出して、困ったからと電話をかけようとすると、電話番号がどこにもない。その会社はさっきのロッテオリオンズのオフィシャルスポンサーですよ。会社の登記はしてますが、電話の登記はしていない。そういう会社。ご相談事はメールでと書いてある。メールを出しても絶対返ってこない。NHKの人と取材に行ったんだけど、あそこの会社はヤクザですかと。ヤクザでもないんです、みんなオンラインの会社、ゲーム会社はこれなんです。

私たちは規制の中に生きていませんか?学校はもちろん規制の社会ですね。例えば自動車だってさまざまな排気ガスに対する規制とか、いろんな規制があって、車が売られ、つくられていますね。自動販売機で夜中にお酒を買おうと思っても買えませんね。タバコだって当然規制があるでしょう。規制の中で暮らしてるでしょう。規制の中で規制がない商売しているのはゲーム会社だけです。みんな規制の中で頑張ってるではないですか。だから、やはりその辺はきちんとやってほしいなあと思います。消費者庁頑張れと思いますけど。どんどん彼らは依存になるような新しい新手を考えます。それはみんな私の同業者・心理屋さんです。はまるように、はまるようにつくられていく。

専門機関ではネット環境から一時切り離しを行う。日常生活を取り戻す。それから、ページ19、さっきの不登校の向きを全部変えてくださいということです。社会(就労)や学校への復帰の支援を行う。そのためには学習とか就労体験を行っていく。僕らのところでは、学校はやはり復帰する時に勉強がついていけないと駄目だから、少しついていけるように勉強しよう、生活リズムを整えようとか、体力をつけていこう、男の子だったらベンチプレスを80K以上上げられるようにしようとか、むちゃくちゃなことを言いますけど、実際60kぐらいみんな上げられるようになる。ひ弱な者でも3食食べて、運動して、学習させて、就労体験させる。それから、その人の得意分野を探してあげるということです。そういう意味で、その子の持っている能力をどう引き出してあげるかということがすごく重要なことだと思います。

質疑応答

ちょっと長時間になりました。お話しはこのぐらいにさせていただいて、質疑応答をさせていただきたいんですけど、よろしいでしょうか。何でもいいですよ。

質問者1

先生のお話をお伺いしていて、私は学校の教員をしておりますけど、普通に登校している生徒は、本校では携帯を禁止しておりますので、9時から4時くらいまでは使ってない状態なんですけど、そういう子たちは依存の状態ではないという判断をしても差し支えないということですか。

牟田

ないと思います。

質問者1

不登校になって家に引きこもっている子たちが主に対象になるんですか。

牟田

ただ、携帯を教室に持ってきてはいけないというのを、どうやってチェックされますか。

質問者1

一応呼びかけだけで、実際は持ってきていると思うんですけど。

牟田

すごいんだよね、ポケットの中に携帯を入れて、見ないでメールを打てるのね。すばらしい、そういう人がいるんですよ、実は。京都大学で数学の問題を、不正事件がありましたね。試験中に携帯で質問コーナーに質問して、パッパッと解くオタクがいるんだね、僕らはとても解けないけど。それが返ってきて、それを写してという不正事件がありましたね、2年ぐらい前に。あの子はこうやって打てるんだって。見るのはこうやって見れるのというと、それは見れない。こうやって見るんだと言ってましたけど、そのぐらい巧妙な子もいますので気をつけてください。だから、基本的に学校は安全な所なので、登下校は使ってもいいけど、教室の中に入ったら使わないようにしていただきたいと思います。

質問者2

私は教育支援センターで不登校のお子さんだけではなく、発達障害のお子さんたちにもかかわらせていただいているんですけど、私はまだ小中学生なんですが、不登校になってる子どもさんは、意外と家族ぐるみというか、きょうだい全部がそういう状態になってるところが非常に多くて、子どもと話しをする時には、別に困ってないとか、別にという言葉で返されることがよくあるんですが、きょうだい全部がそうなるという背景というか、お母様に聞くと、お父さんもずっとやってるからとか、一緒にやってますからと家族ぐるみで楽しんでるんです。それが家族のつながり見たいにとらえていらっしゃる方が中にはいらっしゃって、そういう現実が非常に多くなっているのではないかなと。お兄ちゃんもやってるから自分も夜遅くまでやって、結局朝に起きれなくて、みんなが登校する時間に間に合わないと行きたくないから行かないという、きょうだいが4人いたら4人ともいろんなことでそうなってる。そういうことをどういうふうに、家族ぐるみの風潮というのを阻止というか、それからよみがえさせたらいいのかということをお尋ねしたいと思っています。

牟田

スペースインベーダーゲームを知ってますか。昔、先生が若いころ、喫茶店でデートした時に、机を見るとブラウン管式のテレビの画面みたいなものが埋め込まれていて、ボタンが相互についていて、スペースインベーダーゲームという、ミサイルみたいなのが落っこちて、それがぶつかる対戦型ゲームが日本で一番最初に入ってきたのがスペースインベーダーゲーム、喫茶店におかれていて、そのうち携帯型になったんです。それからすぐにファミコンが出てきて、カシオなんかで時計の中でもゲームができるようなものが出てきた。それから、さっき言った呼び出し電話みたいなのがはやって、PHSになった。今、親の45歳か46歳の人たちは、小さい時から電子ゲームの時代の人たちだった。だから、すごく親和性を持ってるわけです。ただ、昔のオンラインゲームというのは、本当にはやりだしたのは平成10年から試験的なものから始まりまして、平成15年ぐらいに光が全部に入って、パソコンも安くなって家庭の普及した。そのころからオンラインゲームです。家族ぐるみで遊んでいるので、テレビゲームであるとか、単純な対戦型ゲームだったら別に問題はありません。オセロゲームだって問題はありません。オセロという盤を使わないで、電子ゲームでオセロを遊ぶのは構わないわけです。問題は、オンラインのRPG、さっき言ったロールプレイゲームを家族バラバラでやっていると非常に危険ですよ。家族で遊んでいる中身の質の問題によって考えていった方がいいと思います。これはよく言われた話で、お母さんが、うちはお友達がたくさん遊びに来てていいんですと。だけど、不思議なことに一人の子はテレビゲームをやって、一人の子はビデオを見て、一人の子は漫画を読んで、一人の子は音楽を聞いてますと。みんな群れなして遊ばない。15年ぐらい前からそういう時代になったんです。昔だったら五、六人集まったら、キャッチボールやろうとか、サッカーやろうとかというようなことで、やってたからすごく健全だったけど、今は一人ひとりバラバラなんです。それがさっきの家族の中でゲームをやってるんだけど、バラバラにゲームをやってるんだったら、その現象と同じ。それでは人間関係が全然育たない、成長できないということです。やってるゲームの質、電子ゲームの質の問題だと思います。

質問者2

わかりました。依存とまではならないかもしれないということですね。ただ、不登校の長期の一つの要因にもなってるような気がするんですけど、今日のお話の中にある依存という所にまでは行かないかということも多いのではないかということですね。

牟田

そうですね。だから、要因には確かになるんだけど、依存にはそういう単純なゲームの場合にはならないから心配ないということです。むしろ、逆にゲームを使って家族関係を豊かにすればいい。昔だとマージャンを家族でやって、不登校の子とお父さん、お母さんとやって、その中でコミュニケーションしていけば、それで回復になっていくケースもあったんです。だから、それはツールの一つというふうに考えてくれればいいと思います。ただ、依存性のあるもので家族がバラバラにやってた場合、それはどんどん悪くなるということです。

質問者3

博多高等学校の米倉と申します。貴重なお話をありがとうございました。一つご質問をさせていただきたいんですけれども、ネット依存になっている、特に女子とかが多いかもしれないんですが、携帯電話が手放せないような子のタイプで、メールとかラインの返信を常にしておかないと現実の世界で友達から仲間外れにされてしまうので、やめたくてもやめられないという子どもに対しては、どのような働きかけをしていったらいいか教えてください。

牟田

基本的には、やめたくてもやめられないというのは、メールが来た。すぐ返信しないと仲間から見捨てられてしまうんじゃないかという、見捨てられ不安がもとにあるんですね。その見捨てられ不安を解消するためには、現実の中で、自分が見捨てられてないという自己肯定感をどうつくっていくかということなんでね。メールが戻ってこなくても、別にあの人との人間関係や友達関係がおかしくなるわけではないなという確認ができれば。みんな今、見捨てられ不安を持ってる子たちなんです、実は。特に「小学校、中学校の時はよく勉強できたんだけど、高校になるとあなた、さっぱりねえ」と平気で親は言ってしまうわけです。その時から子どもの方は見捨てられ不安を親に感じるわけです。不登校の子でもそうでしょう。親に物を要求する子がいる。自分は学校にも行ってない。高校ももしかしたら留年するかもしれれない、卒業もできないかもしれれない、最低な人間だと思ってる。その最低の人間が、いつ自分は追い出されるかわからない、不安でしょうがない、それが見捨てられ不安ですね。その見捨てられ不安を解消するためには、親に物を要求するんです。買ってほしいと。買ってくれたら見捨てられていないという確認をするわけです。どんどんエスカレートしていくというやり方を子どもたちはとるんです。それは見捨てられ不安を解消していくという行為なんです。友達同士でも、きちんとした人間関係があれば、人は簡単に見捨てることはないよという安定感。安心感をどう教育の中で培っていくかということがすごく重要だと思うんですね。そこの土台のベースが非常に今の子どもたちは脆弱になってるんです。私と齋藤先生も20歳違うんですけど、お友達になってもらったんですが、齋藤先生からしょっちゅう電話やメールが来ないんですね。この間タイからいきなり電話がかかってきましたけれど、齋藤先生がタイに行かれていて、別に斎藤先生から3ヵ月、4ヵ月電話がなくても何も不安もないんですね。そういう感覚が子どもにないんですよ。3ヵ月も4ヵ月も電話しなかったあの人は、もうお友達じゃなくなったかもしれないという、そういう飢餓意識が常にある。でも、確認の仕方が下手くそである。さっきの親に対して物を要求するみたいな。その辺の育ち方がやはり十分できてない子どもたちが、ネット依存になったり、不登校になったり、いろいろな問題を抱えやすいのかなと思います。

質問者4

アスペルガーの子がネット依存になると、特に困難だというご指摘でしたけれども、それはなぜなのかということを含めてお話しいただければと思いますが。

牟田

まずアスペルガーの子どもたちは、やはり普通の子どもたちに比べると、自分が十分受け入れられていないな、あるいは自分の気持ちをわかってもらえてないなという感覚があるんです。僕らからアスペルガーの人を見ても、その気持ちが十分わからないように。その中でいろいろ誤解とか、十分理解ができなくて関係性がおかしくなるという、嫌な体験、嫌な気持ちになることが普通の人よりも多いんですね。多いと、ついつい現実がつらいなと思う。ネットの中の世界にいって、チャットと体の動かし方だけだから、全エネルギー、全力を使って現実社会の中では人とコミュニケーションをしてますけど、ネットの中でのコミュニケーションというのは短い会話だけで、あとは動きなので楽なんです、ここにいて関係性をつくったら。のめり込みやすい人たちが多いから、どんどんゲーの中にのめり込んでいくというようなこと。自己実現をゲームの中に見つけやすいということだと思います。そういうアスペルガーの人たちは、ネットの能力を使ってほかの仕事をできないかどうか、そのネットでチェックをする仕事につけるとすばらしい能力を発揮する子がいる。システムエンジニアがソフトを組んで、うまく起動しない、あるいはバブルことが多い。アスペルガーの人に基本的な公式を少し教えて、ずらずらと打ち出したら、15分ぐらい見て、こことここが違いますと。すばらしい能力を持ってるんですね、彼らは。のめり込みやすいでしょう。異質性の発見はできるんです。そのことだけだったら。全部のことに神経使いなさいというと無理があるけど。そういうネットゲームにはまり込んだアスペルガーの人を、そういう形の職業転換させるケースはよくあるんですけど、外すのが、ゲームの世界をやめさせるのが非常に難しい。かわりのものをどういうふうにつくるかということです。アスペルガーの人たちが、鉄ちゃんが比較的多いでしょう。鉄道ファン。あの人たちは全部、番号から何からすべて覚えていて、僕らにはわからないけど、一つひとつの電車のモーターの回転の音までわかると言うんだから。あるいはディーゼルエンジンの動いている音まで一つひとつ見分けができるというぐらいの才能があるんです。そういう異質性を見つけるものに振替えていくことも考えなければいけないなと思います。やはり現実社会が居心地がよければ、なかなか難しいんですけど彼らの居心地をつくるのは。そういう努力がもしできれば、そういうふうにならないと思います。

それでは、失礼します。