不登校・ひきこもりはニートと関係があるのでしょうか?
- 不登校引きこもり Q&A 教育新聞連載 No.9 -
Q 高校の教員です。不登校やひきこもりはニートと関係があるのでしょうか。小学校で不登校の子どもは中学校でも通学できないことが多いと聞いています。そのまま、高校へ入学できたとしても、中退してしまい、社会的支援がないままに、無学・無就労の状態になるのではないのでしょうか。一般的な質問ですが、個別ケースも紹介いただけたらと思います。
A 不登校からひきこもり、ニートに移行して行く臨床事例は数多く見られますが、全てがそういうケースとは言えません。高校卒業後、予備校に通い受験に失敗してからひきこもってしまうケースや大学卒業後、就職活動が上手く行かずにひきこもるケースもあります。
ここでは、不登校からひきこもりやがてニートに移行した事例について考えてみましょう。不登校が継続し、ひきこもる事例を分析してみると、次の3つのパターンが多いようです。
1つ目は、対人関係において、不安や恐怖傾向が強い子。
2つ目は、インターネットの仮想社会に現実社会より居心地の良さを感じて「ネット依存」になった子。
3つ目は、発達障害を抱えているが、クラスの中で理解と協力が得られず傷ついてしまい身動きが取れなくなった子。
上記のパターンで、小学生で不登校になった子は、中学校でも通学できないと断定することは一概に言えません。しかし、学年にまたがり全休に近い生徒の場合は、中学校へ進学しても再び不登校になりやすいことも事実です。
だが、そのような生徒が高等学校に進学しても、全て中退してしまうとはこれも言えません。どうして言えないのでしょうか。ちょっと古い統計調査ですが、信憑性が非常に高いのでここで紹介をします。文部省の委託研究調査で「不登校に関する実態調査」発表、2001年8月、「現代教育研究会・代表森田洋司」があります。これは1993年(平成5年度)に中学校を卒業した不登校の中学3年生の卒業後5年間を追跡調査した大規模調査です。ですから、様々なタイプの不登校児童生徒がいますが、考える上には参考になると思います。
これを見ると、中学校卒業時、不登校生徒で仕事や」学校の進路が決まった生徒は約8割、決まってない生徒は約2割。進路が決まった生徒で、仕事や学校を継続できた生徒は約8割、継続できなかった生徒約2割でした。一方、卒業時、進路が決まらなかった生徒で、その後、仕事や学校が決まり継続している生徒は約5割、ひきこもって何もしなかった生徒は約5割でした。
進路が決まったが、仕事や学校を継続できなかった生徒の約2割がその後、新しい進路が決まり、継続した生徒は約5割、継続しなかった生徒も約5割でした。以上のことから考えて、不登校からひきこもった生徒も一度動き始めれば、ある程度、仕事や学校が継続することが理解できました。
しかし、最近、不登校の子や親は学力さえあれば、高校や大学に行けると考え、個別塾などで勉強し、高校や大学等に入学しますが、人間関係が全く築けず、学校内で孤立し、再び学校に行けなくなるケースが非常に多くなっています。そのような考え方の人は、「高校や大学等さえ卒業すれば、大丈夫だ、問題はない」と本人も親も考えている人達です。
実際は学校や社会は集団生活の場であり、自主性や社会性を土台にしたコミュニケーション能力を含めた人間関係能力がないと長続きすることができません。これは不登校の子が通信制高校に行き、単位だけ取って卒業しても、社会に入れず、ニートになってしまうことと同じことです。
不登校の子には体力、学力、生活リズムの安定、人間関係力、日常生活力の5つが基本的な能力向上が必要であり、総合力をつけることによって、はじめて文部科学省の生徒指導提要にある不登校の最終目標である「社会的な自立」が可能になることを理解することが大切です。
平成23年3月 教育新聞掲載 文責 牟田武生