知的発達の遅い子の不登校

- 不登校引きこもり Q&A 教育新聞連載 No.8 -

 小2の担任です。クラスの中で知的に低い子がいます。その子がこの2週間あまりポツポツ休みがちになりました。保護者も家で元気がなくなっているため、心配しているとのことでした。クラスで何があったのかについて、本人は何も話してくれません。担任はどうかかわりを持ったらよいのでしょうか。

 IQ70以下の人を知的障害があるとされています。知能指数の分布から考えると2.27%はいるとされています。人口から割りだすと284万人になります。しかし、実際に認定を受けている人は15%程度です。

 この児童が知的に低い子だから知的障害があると断定できませんが、担任が学校生活全般あるいは、学力的に判断力や記憶力から考えて、普通学級について行けない状態ならば、やはり、知的障害かボーダーラインの可能性が高いと言えます。

 小学校低学年で学校を休みがちになる主な場合は、お母さんとの精神的な結び付きが浅く、学校に行くことによって、その絆がさらに弱まってしまうのではないかという不安から起こる「母子分離不安」です。しかし、知的障害やボーダーラインの児童の場合はあまりあてはまらないケースが多いようです。

 本人が学校を休み出す理由として具体的な問題、例えば、意思伝達、対人スキル、学習能力、自己管理能力の低さなどの他の問題を抱えている場合が多いようです。しかし、本人がそれらの問題を認識して不安になり、学校を休んでいる分けではありません。

 本人にしてみれば、悩んでいることがはっきりとはせず、何となく学校に行こうとすると、不安になってしまい行けなくなることが多いようです。その中には対人関係として級友が意地悪をすることや悪口やからかわれるなどの行為も含まれます。

 担任としては保護者との連携を保ちながら、登校時には級友との人間関係で不快な行為が行われていないか、充分にチエックしてみる必要があります。

 もし、本人にとって不快に当たる行為がある場合には、目撃した内容で具体的に加害者に注意してください。その時に「なぜ、それがいけないことなのかも級友に伝えます。多くの場合、「こいつはやられても仕方がないんだ。こいつ自身は何にも感じていないよ。」と言うような差別的な発言が含まれている場合は、加害者が納得するまで説諭する必要があります。

 学習面で遅れだしたということが、気になり、学校に登校しづらくなっている場合は、教室内の座席に配慮が必要になります。教師の目の届く、できるだけ前の席にし、優しい面倒みが良く、本人と相性の良い子を隣席にするなどの工夫が必要です。また、担任は授業中や休み時間中も、時々視線を合わすようにして「居ても良いんだよ」と安心させる必要があります。

 学校側は担任一人に任せず、学校全体で対応する必要があります。そして今後のことを考え、保護者と充分な話し合いを行いながら、本人にとって特別支援教育の枠組みの中で教育指導していくことが望ましいのか、または現在の普通学級のままが良いのか、本人の様子をみながら判断をする必要があります。

 そして、特別支援教育支援は、「従来の特殊教育の対象だけではなく、LD,ADHD、高機能自閉症を含めて、障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的なニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習困難を改善また克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである」と、文部科学省は特別支援教育の在り方で述べています。そのことも、保護者の方には理解して頂く必要があります。学校への行きづらさを克服するために、教師や保護者は協力し、あらゆる支援を行う必要があります。

平成23年2月 教育新聞掲載 文責 牟田武生