サポート校

- 不登校引きこもり Q&A 教育新聞連載 No.7 -

 中学校の進路指導担当です。不登校だった生徒に通信制高校に通いながらレポートの指導を受けるサポート校を進学先に進めました。保護者の話によると、高1の5月頃までは通っていましたが、そのあとは全くサポート校にも通信制高校のスクーリングにも行けず、その年度末に、通信制高校とサポート校を止めたそうです。「年間100万円ほどのサポート校の学費がもったいなかった、どうしてくれるのか」と私に訴えてきています。知らない顔をするわけにもいかず、できれば本人がひきこもりから立ち直れるような支援先を見つけたいと思っています。そのようなところがあるのでしょうか。

 私の相談室にも毎年6月以降、同じような相談が多くなります。保護者は高校卒業資格でもなければ、就職もできないから、通信制を併用したサポート校でもよいから行ってくれという思いがあるのでしょう。また、卒業させる中学校側にも、保護者の意向や本人自身の意思、卒業後の進路が決まらないと卒業が決定できない事情もあるのでしょう。

 そんな不安な気持ちでいっぱいの本人及び保護者に対してサポート校の新入学生担当者は「不登校の生徒向けのクラスがあり、一人ひとりの生徒をサポートするシステムやカウンセラーを用意しています。もし、再び、不登校になっても、やんわりと登校刺激をします」と営業的なリップサービスを行うので、つい入学してしまうケースが多いのが実情です。しかし、一部の悪質なサポート校は入学してから充分なケアーが行われないばかりか、責任者が生徒の出席状態も分からないところすらあります。

 多くの不登校の生徒の場合、学校を変えれば、登校できるというものではありません。基本的には5つの大切なポイントがあります。生活リズムが安定、体力的に普通生活が可能、心に様々な不安が現れても自己解決能力がある、対人関係の安定、年齢に相応しい学力が安定しないと登校はできません。

 これらの条件が満たされるようになれば、生徒はどんな高等学校でも登校できます。本来は不登校になった児童・生徒に対してこれらの5つのポイント全てに対応し、心・身・学力・生活・人間関係力を向上するようなカウンセリングやケースワークが望まれます。そして、高校生はそれら以外に、将来の自立へ向うために社会性を身に付けるためにビジネススキルも必要になっていきます。

 しかし、現実的には、ひきこもってしまい対応出来なかったり、充分な対応ができていないのに受験期になってしまったり、発達障害や精神障害を抱えているために対応が困難だったりするなど、個々の事例によって様々な困難を伴うケースもあります。

 そこで、不登校状態の生徒の進路指導は不登校のタイプや心情変化、障害の有無、学力状態、生徒及び保護者の希望等を充分に検討する必要があります。さらに個々の生徒の状態像に応じることが可能な学校やフリースクールを含む施設の対応状況の情報を収集し、ミスマッチが起こらないようなコンサルテーションしていきます。

 進路指導の失敗による高校中途退学は、生徒自身が失敗体験を積み重ねることによって、大きな挫折感と心の傷をさらに拡げることになり、ひきこもりの長期化や精神的な二次症状を招く結果につながることになります。

 平成22年4月に文部科学省は生徒指導提要を発表し、不登校解決の最終目的は社会的自立とし、「社会的自立に向けて自らの進路を主体的に形成していくための生き方支援」としました。

 もし、卒業時に進路が決まらない場合は、利用者に費用負担がかからない厚生労働省事業「地域若者サポートステーション」や「合宿型若者自立プログラム基金訓練コース」等を利用することによって、切れ目のない支援をしていくことも出来るようになりました。

 「学校から社会」という固定観念から抜け出し、欧米並みに「学校から社会、そして、また学校へ」と意識をシフトする時代になりました。不登校生の社会性を付けるためや未熟さからの成長させるために、学校以外のこれらの施設を活用していくことも大切な時代になってきています。

平成23年1月 教育新聞掲載  文責 牟田武生