オンラインゲームをやめさせてほしい
- 不登校引きこもり Q&A 教育新聞連載 No.5 -
Q 中2の担任です。クラスの男の子の中に、もう1週間以上休んでいる生徒がいます。どうやら、家では一日中、インターネットのオンラインゲームをしており、家族ともほとんど顔を合わせていないようです。担任としては、母親からオンラインゲームを止めさせるにはどうしたらよいかと聞かれ、どう答えたらよいか困っています。
A 最近、オンラインゲーム(ネットゲーム)にはまってしまい生活リズムが崩れ、登校しない児童生徒が増えて来ています。特に夏休み明けなど、長期休暇の後からこのような状態になる子が多いようです。
オンラインゲームはインターネットを使い複数の人と楽しむゲームです。そこには、
仲間同士のチャットを通してのコミュニケーションの楽しさとゲームの楽しみの両方があります。
家にパソコンやインターネットに接続できる専用のゲーム機が家庭にあれば、無料又は月1500円程度で楽しむことができるため、大きな費用がかからないので子どもでも楽しむことができます。
また、親にとっても、費用がかからないことや親たちの世代もファミコン世代なので、電子ゲームに親愛感を持っているためか、子どもがネットゲーム依存になるまでは、大きな問題にならないようです。それどころか、子どもに高性能のパソコンを買い与えたり、携帯型ゲーム機を祖父母が誕生日祝いにプレゼントしても「良かったなぁ」という反応が多いようです。しかし、オンラインゲームに依存してしまうと、一日中やり続け、学校に行かなくなってしまうケースもあります。
その魅力はどんなところにあるのでしょうか?
- オンラインゲームは従来のTVゲームと違い「クリアー」がないエンドレスゲームであること。
- コミュニケーションや人間関係に苦手意識を持っているために、友達ができない子でも、同じ趣味のゲーム仲間ならゲームの話しかしないので、すぐに友達になれ、チームに入り、冒険や戦いを通して仲間意識が強くなり、自分の居場所や自己有用感が高まること。
- 好きな時間に好きなだけやれ、やればやるほど、ゲームの中での地位やマネーが増え、仲間から尊敬を得られること。
- ゲーム仲間同士の結束は強く、戦いには必ず参加しないと仲間への裏切りになってしまう。
オンラインゲームは、マンガ、TVアニメに小さい頃から親しんでいた日本人の子らにとっては誰でもが抵抗なく入れる世界ですが、ネットゲームに依存してしまうと、なかなか抜け出だせないのが実情です。そのために韓国や中国、タイなどの国では子どもの健全育成のために様々な規制を国が行っています。残念ながら、ネットゲーム依存の進んでいる日本では国や行政にその認識がなく、野放しの状態です。ですから、家庭でその取り組みをしなくてはなりません。
しかし、ネット回線の契約を本人に無断で解約したり、パソコンを取り上げると家庭内暴力に発展するケースが多く。対応に苦慮しているのが現状です。だが、そんなことを言って放置しても、思春期を全て使ってしまう事例もありますから、ここでは臨床で上手く行っている方法を紹介します。
- 子どもがどんなオンラインゲームをやっているのか、肯定的に聞き、何が楽しいのか聞いてあげる。学校でのいじめや友人関係での嫌なことから始めるケースもある。
- ゲームをやっても良いが、ゲームだけの生活はいけない。学校や勉強をやりながらゲームをやっても良いから、自分で時間の自己規制(平均は2、3時間)するように勧める。その際、本人がネットゲーム依存であることを告げる。そして2週間様子を見る。もし、できなければ、他者規制することを告げる。
- 他者規制は、保護者だけでなく、担任やカウンセラーが入り、ゲーム時間の規制と罰則を犯した場合は環境を変える意味もあり、専門機関で合宿を行うなどを書込み、書面にして、本人、保護者、第三者がサインして様子をみる。
- ネット依存を治療できる専門機関に行く。
専門機関では、コミュニケーション能力を含め、生活リズムの改善、人間関係力をつける。本人の能力に応じた学習、カウンセリング等を行うことによって、インターネットの仮想社会より現実社会の方が楽しくなるように指導する。
平成22(2010)年10月7日(木曜日)教育新聞掲載 文責 牟田武生