退行の場合は親の気持ちを支える
- 不登校引きこもり Q&A 教育新聞連載 No.2 -
Q 小3の担任です。クラスの男の子が、最近、急に続けて休むようになりました。その子には5年生の兄がいて、その兄もこの数ヶ月学校を休んでいるそうです。担任としてどのように本人を支援してあげられるのでしょうか。
A
新たな担任や級友もでき、新学年は緊張感で始まります。しかし、5月GW以降、疲れが出はじめ学校を休み始める子が多くなります。欠席し始めた児童生徒の対応として担任は、級友で仲の良かった子や席の近い子に本人の様子を聞いたり、保護者から話しを聞き、家庭訪問をしたりと、対応に忙しくなります。
また、兄妹が同じ学校に在籍している場合は、同僚の先生に兄弟の様子を聞いたりするなど情報収集します。その目的は、不登校の原因として、いじめ等があったのではないかなど、様々な問題に対処するためです。
このQでは、いじめ等、特定する原因はないが欠席が続くので、兄のクラスの担任に聞いてみると、5年生の兄も休んでいる様子だとすると、家庭の問題と考えてしまいます。
兄妹で不登校になるケースは多いことも事実ですが、全て、家庭の問題としてしまうことには疑問が残ります。たしかに、兄妹の気質や性格が非常に似ていて、家族や夫婦関係に問題があり、家が常にゴタゴタしている。母親が家族で孤立している等の様々な理由から、本人達がそれらのことに気を使い疲れてしまい不登校になる場合もあります。
家族問題が含まれている場合は家族の問題に立ち入って行かなくなりますので、そんな場合はスクールカウンセラーが中心になり、問題の解決を図っていかなければなりません。また、児童相談所の応援も時には必要になる場合もあります。
兄妹の気質や性格が似ている、家族の協力も得られている。そして、家族に不登校になるような問題はなく、兄妹仲も良いという場合、兄の不安な感情が弟に伝わり、同じような不安に陥る場合があります。これらの場合は別々の教師が係るのではなく、一人の教師やカウンセラーが不安を充分に受容し、気持を整理し、不安を取り除かなければなりません。しかし、これは思春期前の小学3年生では起こりません。早くても小学5年以降の思春期に入っている兄妹に多い事例です。
兄妹でも気質や性格が全く違う場合があります。そのような場合は原因が違う場合もあり、家族の問題として考えて対応すると失敗する場合があります。兄妹ではあるが、別々の問題として、捉えていった方が良い結果が得られます。
このケースに似た事例で良くあるのは、兄(姉)が不登校になり、対人関係の不安から退行を起こし、兄(姉)が母親を独占してしまい。弟(妹)は母親の心の中に自分が入る余地がないと感じ、不安感から不登校なることがあります。
対応方法としては、乳幼児期に母親から無意識に刷り込まれた未分化な感情をもう一度、退行を通し、すり替えていく退行は、発達課題のやり直しなので兄(姉)にとっては、大切な行為ですが、一日中やっているわけではありません。10歳の彼と3歳の彼が混然としていて、3歳の彼になった時に退行を起こします。退行を起こしてない時に、母は弟(妹)を受け止め、悲しい、寂しい、辛い、という様々な感情を母親と共感することによって弟(妹)の気持ちは安定に向かっていきます。
教師は親にはなれません。子どもの退行を受け止めることはできません。しかし、親の心配や子どもが学校にいけない不安を受け止めることはできます。先生にわかってもらったという感情は親の心の安定につながり、やがては、子どもの心にもその安定が伝わり、再登校へと結びつきます。
キーワードは「退行を起こしている時は保護者の気持ちを支える」です。
平成22(2010)年7月22日(木曜日)教育新聞掲載 文責 牟田武生