”不登校からニートに”が顕著

  • 教育新聞 2009年10月22日掲載(※許可を得て転載しています)

文部科学省は今年3月の通知「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」の中で、1.高校での不登校は中途退学のケースが多く、ニート、ひきこもりといった社会的問題との関連性があるとの認識を示し 2.支援に当たっては、児童生徒など若者の将来的な社会的自立に立つことが重要などの考えを示した。この通知では、これまで以上に文部科学省の若者の自立支援への取り組みが強調されている。不登校児童生徒への支援を含めた青少年健全育成の視点について、牟田武生NPO法人教育研究所理事長、文部科学省生徒指導等関連事業審査委員会委員に執筆してもらった。


青少年の健全育成とめぐって、内閣府の「青少年大綱」(平成20年12月)、「子ども・若者育成支援推進法」(21年6月)など、国は新たに動き始めている。

現在、20代の若者の失業率は10%を示し、30歳代前後の若者は就職氷河期に直面し、非正規就労から抜け出せないでいる。若者はいまや、社会的弱者になりつつある。

背景に不登校や高校・大学の中途退学があり、不登校やひきこもりが長期化し、ニートに移行すると、社会参加が極めて難しくなる。これらの問題を家族だけで解決するのは困難を極め、ひきこもりを中心にした非社会的行動が日本では90年以降定着した。

縦割り行政では、子どもが不登校から引きこもりになっても、在学中は文科行政の範囲だが、ひきこもり状態での中途退学や、形式的に卒業しても働き出せば厚労省の労働行政の傘の下に入る。

しかし、多くの場合、在籍の枠を外れると、長期に及ぶひきこもりになる事例が多い。学生きがなく、働いてもおらず、18歳を過ぎると児童福祉法から外れ、文科省や厚労省の支援などが受けられない。

そこで、国は不登校からひきこもり、ニートになった若者を自立させ、社会参加へ導くために、平成20年12月に内閣府が出した新しい「青少年大綱」の基本理念として青少年の健やかない成長を保障する社会の実現を目指しており、少年非行の問題とともに不登校・ひきこもりや青少年の自立支援を柱に掲げている。

また、ひきこもりやニートに対する支援だけでなく、すべての子どもや若者が直面している社会的困難を乗り越えるために、来年4月に「子ども・若者育成支援推進法」が内閣総理大臣を本部長として施行される。

学校関係者にとっては、現在、在籍している生徒だけでなく、中退者や卒業生に関しても注意を払い、就職活動も含めて、様々な関係機関と連携を図りながら、子どもや若者の健やかな育成を行い、円滑な社会生活を営むことができるように支援していこうというものである。

とりわけ不登校数とニート数の経年推移(表)から分かるように、不登校からニートに移行するケースが顕著で、「不登校の予防」「不登校からひきこませない」「ひきこもりになっても長期化させない」などのそれぞれの取り組みが、喫緊の課題である。

不登校数とニート数の経年推移(表)