「ニート対策・若者自立塾」<1>
- MSN-Mainichi INTERACTIVE No.21 -
15歳以上35歳未満の独身で、1年以上にわたり就労や就学をせず、労働訓練を受けていない若者、すなわち「ニート」が増え続けている。国は、今までヤングジョブスポットなど若者の就労相談にのる窓口などを作り、様々な支援対策を行なってきた。そして、今年度から新たな事業として共同生活をしながら就労意識を育て、就労体験を図り、生き生きと働ける自立した若者を育てるニート対策の切り札になる事業「若者の自立塾」を始めた。事業は支援実績のある民間団体に委託され、10月より全国20カ所でそれぞれ独自のプログラムによる運営が始まっている。3カ月間の訓練を受けさせ若者を就労させることが目標だ。
私が主宰するNPOも富山県宇奈月温泉で活動が始まった。不登校からひきこもりそのままニートになった人、高校を卒業した後、工場で働いたが機械化によって、人手が要らなくなって解雇された人、長時間の肉体労働を強いられ心の健康を害した人など、個々の事情は様々である。
“なまけ”ではなく、様々な社会的な事情から排除された人や人間関係で傷ついて身動き出来なくなった若者が多い。精神的にも肉体的にも癒されながら、自分の将来に対してポジティブに考え、行動できる社会人としての基礎的な土台つくりの訓練が必要だ。
その為に、癒し、人間関係のスキル、生きる楽しみ、他人と共に汗を流し働く喜び、モチベーションを高く持ち「社会に貢献できる一流の人間になる」ことを目標にしている。また、地域のゴミ拾いや雪かきなどの奉仕活動を通じ、地域への貢献をする。
「若者は若者を呼ぶ」を合言葉に地域再生の一翼を担うことができればと、宇奈月自立塾の全面的な協力者で地元の実業家の安藤建二社長(56)も期待する。
自立塾は黒部川沿いに面した旧大手会社の保養所を改築して使っている。24時間入れる天然温泉の内風呂。昼夜食は宇奈月ニューオータニホテルの社会貢献事業による寮内研修を兼ねたケーターリングサービスによる豪華な食事など「ニートの癖にそんな生活してよいのか」と批判を受けかねない暮らしである。
塾生は現在9名(男7名、女2名)で、朝6時半に起床。ファーストステップのメニューは朝食後、部屋の掃除、人間関係のトレーニング以外に最大酸素摂取量を測定できるエアロバイクを使用して体力測定し、個人の体力に応じたトレーニングをバランスボールなどで行う。また、呼吸を整え自律神経を安定させるストレッチ体操も行なっている。
午後は豊富な温泉を利用し、庭にある池を全面的に改修し、露天風呂つくりに汗を流している。この塾を卒業し就労した後、悩んだり、疲れた時は、自分達が作った露天風呂なのでいつでも、入りに来て悩み相談に乗るよと言う配慮からである。この露天風呂は1期生の卒業作品になる。山々の紅葉が終わる頃、庭の露天風呂が楽しめるようになる。
セカンドステップでは、新川育成牧場、ニューオータニホテル、フィール宇奈月、宇奈月ビール園などの協力のもと、シュートジョブ体験がいよいよ始まる。塾生は緊張感を伴いながら地域の支援を受け、社会人としてのステップを再び登り始めている。
文責 牟田武生