生き方探しの旅へ2部(3) ぼくの自分探し
- MSN-Mainichi INTERACTIVE No.19 -
「情報過多、職業選択の自由社会で自分探しをしている若者は、どんな仕事がしたいのか分からない。大人達はあれこれ考える前にアルバイトでも良いから働きながら見つけていけばと思うが、実感としての生活経験が乏しいから、その自信もないと言うことかな」
「多分そうだと思います。兄弟の数が少ないので母親が先回りして、生活のことは全てやってくれる。だから、人間関係を含めて問題解決力が育っていない。子どもは勉強だけをしていれば良い。勉強なんてゲームと同じでルールを覚え反複練習すれば良い。実体験としての生活経験ではなくバーチャルのものですよ。だから、人間関係のスキルが育たない。ひとの中にいると気疲れするのです」と謙介は答える。
「それはひきこもりやニートの人だけでなく、今の若者が持っている共通の悩みではないのかな」
「そうなのですか?」
「度合いは人によって違うと思うけれどそうだと思うよ」
「先生は7月に韓国へ、ひきこもりの人を連れて人間関係のスキル学ぶキャンプに行きましたよね」
「行ったよ。ソウルから車で一時間ほど走った京畿道カピョンで
韓国の精神科医や若者と一緒に合宿をやったよ。北朝鮮まで20キロという田舎で自然に溢れたいい所だったよ」
「そこで何をやったのですか」
「KBS主席太鼓奏者の指導による韓国太鼓や打楽器を叩きながら踊ること、音楽療法家による西洋ドラム・アンサンブル、武道家による韓国太極拳体験など、音楽療法や運動療法をやった。勿論、韓国の人と子どもの伝統的な遊びや合宿生活を通して、文化的交流などをやった。田舎の保養所だから自分達の仲間しかいない。外国だけれど安全な安心できる空間だから、みんな伸び伸び本来の自分姿を出し、言葉が不自由な分、相手の表情やジェスチャーや片言の英単語で驚くほど、多くのコミュニケーションをしていたよ。最後にソウルに戻って、ネットゲーム開発会社視察や日本が統治していた頃、独立運動をした民衆を捕えた刑務所などを見学して、日本と韓国の不幸な歴史を直に学んだ。
みんな、その刑務所にはショックを受けていたよ」
「それが人間関係のスキルとどう結びつくのですか」
「相手の動きや音に合わせる、最初はバラバラだったものが、調和が取れてみんなと一体になっていく。相手の気持ちや言葉に耳を傾けることによって、自分の世界に相手が自然に入ってくる。ひきこもりの壁が壊れ、他の人とのコミュニケーションが楽しくなることかな」
「ネットゲームにはまって、四年間もひきこもっていた人が“日本からの独立運動していた人達は、今でいうテロリストと同じように見られていたのですね。何が真実なのか、自分の目で確かめないといけないのですね。これで北京語を習うために台湾に留学する決心が本当につきました。自分を変えなくちゃ”と言っていたのが印象に残っているよ」
「僕も自分の世界を広げるために、考える前に行動を起す勇気が必要なのですね。世界は広い。海外に留学とまで行かなくても、遊学をして自分の世界を広げることによって、変えることも出来るのですね」と、謙介は力強く言い切った。
文責 牟田武生