ネットゲーム 友達が欲しい

- MSN-Mainichi INTERACTIVE No.6 -

 翼(仮名、中学3年)は、学校でいじめを受け他人を信じられなくなり、不安からひきこまざるを得なかった。

 カウンセリングを終え、家に帰った母親は一日中ゲームに没頭する翼をいっさい責めなくなった。翼の心を知るため、ネットゲームを理解しようと本や雑誌を読みあさりインターネットで情報を集めた。そして、翼が食事をしている時に自分の知っているネットゲームのことを尋ねてみた。

 はじめはびっくりした顔をしていた翼が話し始めた。
 「他人は信じられないし、一緒にいると気を使って疲れる。その点、ネットゲームで知り合ったキャラクターはどこの誰だか分からないが気を使わずにすむ。好きな時に好きなだけ一緒にゲームしおしゃべりもできる。同じ趣味で気が合うこともあるけれど、現実世界のことは話さないし、キャラクターは表情がないから気を使わなくていいからかもしれない」  「生身の人間は話をしていても、途中で会話がなくなるとしばらく沈黙が続く。そんな時、相手が自分の話に気を悪くして怒っているのではないかと勝手に思いこみ、必要以上に気を使い。あせって、場違いな話をしてしまい変な顔をされてしまうことがよくあった。ネットゲームではそんな気を使うことは全くないから居心地は良いし、自分の思った通りやれるから楽しいのかもしれない」

 「そんな思いで翼は学校に行っていたのね。辛かったね!
 お母さん・・気づかなくてごめんね!」
 「・・・どうしたら、本当の友達できるのかなぁー」
 「学校の友達だよ!・・」
 「どんな友達?」
 「気を使わなくて、楽な気持ちで一緒に過ごせる奴かなぁー」

 再び相談に見えた母親は経過を話し
「この後、どうしたらよいのでしょうか」と私に尋ねた。

 「お母さんは努力をされてネットゲームを理解して翼君と話が出来たのですね。そして、本音を聞き出したのですね。すごいですね!」
 「翼君は学校生活で友達と上手くいかなかった経験をしたけれども、やはり、現実世界で友達が欲しかったのですね!気を使わなくて、楽な気持ちで過ごせる友達・・本質をついていますね。翼君にとって、ネットゲームは現実世界で満たされなかったことの代用だったのかも知れませんが、不登校になってひきこもりの生活をしていると、現実世界がなくなるから仮想世界がいつの間にか全てになってしまったのですね」

 「どうしたら現実世界に戻れて友達が出来るのでしょうか?」とお母さんは私に尋ねた。
 「焦らないでください。翼君の心には、他人を信じられない。どうしたら信じられるようになるのだろうかという不安があります。信じることや愛することができるか等の不安は抽象的なので、解決策が具体的にある訳ではありません。包まれるような温かい人間関係の経験の中から自然と育まれてくるものです。お母さんに愛されている。見守ってくれていると感じることが動き始める第一歩になります。ですから、単にネットゲームを止めさせれば現実世界に戻るようなことはありません」

文責 牟田武生