統計的信頼度をどう扱うか

- 効果を高める学校アンケート Q&A 教育新聞連載 No.6 -

質問
中学校の研究主任です。アンケートの報告書を作成するとき、調査の信頼度を必ず示さなくてはいけないのでしょうか。信頼度に有意差がない場合は、報告書に掲載できないのでしょうか。また、アンケートは年間に何回程度実施すれば、有効なのでしょうか。
回答
これまで、学校アンケートの実施方法、分析方法、報告書など作成するときの注意点について述べてきましたので、アンケート調査に対する総論的な考えを述べたいと思います。
(1)アンケート調査は従である
アンケートを実施し、データ集計、分析、評価を行い、報告書を作成し、具体的な対応策を検討する。これが大きな流れかと思います。問題は、データ結果の意味づけをどのように行なうのかが、一番の悩みの種ではないでしょうか。この中で分析結果において説得力を持つのが、統計的信頼度です。統計的な検定はこのために行ないます。しかし、統計的な分析結果はあくまで、数学上の理論です。前回述べたように、学校現場においては、日常的に子どもたちと接している、経験豊富な先生方の直感が、統計的分析の結果を上回ることもよく見られます。先生方がある事柄について徹底的に議論を行い、対策方法を見つけていくことが、重要だと何度も述べました。それで充分子どもたちのさまざまな問題に対応できるはずです。つまり、大事なことは、「アンケート調査は主でなく、あくまで従」として捉えることが必要になるということです。先生方の経験から見えてくる子どもたちの実態をアンケート結果により統計的に裏づけをする。それが検定の意味であり、それ以上のことではありません。報告書を作成するとき、学術的論文では信頼度の問題は避けて通れませんが、学校現場のアンケートでは、先生方の判断が信頼度です。信頼度にこだわるあまり、自分の直感を犠牲にしてしまうことのほうがむしろ問題です。高度な統計的知識はなくても、経験豊な先生方の報告書は、統計の専門家が作成した報告書と遜色はないと考えます。
(2)継続は力
もうひとつは、アンケートの継続実施です。例えば「いじめ」のアンケートを継続実施することにより、実態が具体的に判断でき、対応策が明確になってくることはよくあります。特に、学校現場では、ほとんどの子どもたちは3年間継続して在籍するわけですから、非常に良質的な時系列データを得ることができると考えます。できれば同一テーマで年1回、3年間は継続して実施して下さい。
(3)教育指導に生かす
そして最後に、繰り返し述べますが、アンケート結果を教育の現場に生かすことです。アンケートの結果利用は、統計リテラシーへの意識づけ、統計数学への興味の喚起など教育手段として非常に幅の広い利用ができます。また、保護者や地域の方々にも、アンケート結果を報告することにより、学校の「生徒の問題行動」などに対応する意識や対策を具体的に伝えることができるかと思います。

平成24(2012)年10月4日(月曜日)教育新聞掲載 文責 久玉和昭

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