フィンランドからの考察/新しい「教育格差」増田ユリヤ 著

いくら教育改革を行っても、解消できない教育への不満がある。その根本的な原因を解き明かそうというのは著者のねらいだ。そのために、1.中高一貫校が生み出す公立校格差 2.学校間・生徒間格差 3.教員間格差 4.校内暴力とモラルの格差 5.携帯いじめと共感力の格差 6.男女の格差 の6つの「格差」から切り込む。

著者は05年からフィンランドの学校現場や教育委員会などを精力的に取材しており、現地取材の説得力がある。

フィンランドでは、中学卒業後、大学進学を目指す普通科高校と職業の専門資格を取得することが目鄭の職業学校にコースが分かれる。高等教育の段階でも、総合大学と職業専門大学が用意されている。

昨年1月の現地取材時には、普通科高校の進学率が6割弱、職業学校進学率が3割弱で、保護者は成績が悪くなければ普通科高校に進学してほしいとの思いがあったという。そんな中で、国の施策として、普通科高校と職業学校の進学率を五分五分にする方針が打ち出された。そして、ヘルシンキ新聞によれば、同年の夏には、職業学校入学者が普通格好候を抜いたというから驚きだ。

著者はグローバル社会で必要な力に「共感力」をあげる。フィンランドでは、ほとんどの強化で不ループ学習が積極的に取り入れられている。自分と違う価値観を持った人たちの意見を聞きながら、自分の主張もし、その中から新しいものを生み出していく力が子どもたちに必要、と考えているからだ。

日本の教育を考える素材がいっぱいだ。

講談社現代新書/756円