不登校・ひきこもりからの学校適応への道筋

NPO法人教育研究所主催の今年度夏季セミナー「第19回教師&専門家のための問題行動研修会・埼玉ワークショップ」が7月30、31の両日、埼玉県嵐山町の国立女性教育会館で実施された。ワークショップは、1.不登校・ひきこもりからの学校適応 2.主に幼稚園における自閉症・広範性発達障害、高機能・自閉傾向。多動の発達支援ならびに学習障害・多動についての治療指導 3.学校現場での様々な問題行動への対応――の3つのテーマについて、事例を交えながら研究協議が行われた。

このうち、同法人の牟田武生理事長による「不登校・ひきこもりからの学校適応への道筋」と題した講座では、不登校児童生徒数を引き上げた無気力型の新たな不登校タイプの解説やスクールカウンセラーとの連携と課題ついて説明された。

不登校のタイプのうち、「心因性、無気力型(退却神経症)の特徴と基本的な理解」「ネット依存とひきこもりの関係とその対応」などについて、牟田理事長は次のように説明した。

子どもがネット依存になりやすい家族とは、▽家庭に親族を含めて訪れる人が少ない家▽両親が共働きなど家にいないことが多く、子どもが一人で家にいる▽両親にインターネットについての知識が乏しい▽親がネットゲームやテレビゲーム好き▽子どもは個室を持ち、無線LANなど自室で遊べる環境が整っている――こと。

不登校が始まってから、家族がやってはいけないこととしては、▽心配りは大切だが先回りはしない(成長の阻害)▽「学校行けないくせに何を言っているの」「どうせ何もできないくせに」「学校行くなら買ってあげる」といった登校刺激をからめたいやみを言うこと、そのほか、学校に行かないことに対する懲罰として命令や禁止は行わない。あくまでも根気よく話したり、コミュニケーションに努めることが重要。

また、来校してきた親との信頼関係については、相談の中には、親自身が自分のことを話して涙を流すことで心のとげが取れ、そこから子どもへのかかわりが変わってくることもある。カウンセリングでは、親とカウンセラーがこのような過程を通して信頼関係ができ、それを媒介にして、子どもとカウンセラーとの信頼関係ができてくる。中には、うつ的な状態の親がいるが、親子や夫婦関係が改善してくるとうつ的状態も改善してくる。ただ、学校の先生がどこまで親の個人的な課題に踏み込めるのか。スクールカウンセラーや教育相談員の力を借りる必要があるとした。

スクールカウンセラーの活用については、相談時間は授業時間である場合も多いので、子どもは授業を抜けてまで相談にはいけないため、子ども自身による活用率が悪いことを指摘した。加えて、相談支援活動にはその基盤としてインフォーマルな関係をつくることが大切であるため、相談室でただ待っているだけではなく関係性を深めていくために、部活動の場などに自ら入っていく努力の重要性についても説明した。

同研究所では平成17年度に横浜市で、平成19年度に岡山県岡山市で、それぞれ不登校児童生徒ならびに保護者の調査を実施した。その結果、この時期に不登校の児童生徒数が増加した背景には不登校の新しい層の増加があることがわかった。

その不登校像は、情緒には問題がないが、人との関係や学習から引いてしまう、無気力タイプの子どもといえる。

このようなタイプの対応方針については、無気力タイプの子どもでも、課題について認識できれば克服は可能。家庭では家庭の役割を、学校では学校での役割を持たせ、「あなたのおかげでできた」と言われる体験を積み重ねていくこと。無気力の子どもには、自己有用感が十分に育っていないので、自分が認められる体験が大切などとした。