若者の自立支援の新しい形

2003年から20の団体で開始した厚生労働省の委託事業である「若者自立塾」も2007年には参加団体が30に増え、若年無業者の自立支援に対してさまざまな支援を行ってきましたが、2010年3月をもってその事業が終了となりました。共同生活を伴う合宿型の就労支援事業として、いわゆる「ニート」など問題を抱え込み、社会参加の難しい若者たちのための自立支援に多大な貢献をしてきました。「若者自立塾」の基本理念は「若者たちへの労働の意欲を涵養させるための訓練」であり、それぞれの団体の独自に工夫されたプログラムによって、多数の若者が社会へと巣立って行きました。
 若者自立塾の訓練は「生活訓練」「就労訓練」を併行して実施することが当初の目的でしたが、参加者の大半は「就労訓練」を受講できる以前の状況であり、まず日常の生活の安定からスタートする必要性がありました。その結果どうしても「人間関係の克服」「生活訓練」「体力作り」など、社会参加をするための基礎作りが中心とならざるを得ませんでした。三か月の期間(途中で六カ月コースも設置されましたが)で「生活訓練」を終え、「就労訓練」による社会スキルを身につけ、自立への道を進んでいくことは、かなり困難を伴うものでした。事業廃止での「対費用効果」云々による廃止決定はともかくとして、24時間の共同生活を伴う「若者の自立支援」の場である若者自立塾はそれぞれの団体の熱い息吹が感じられたように思えます。
この若者自立塾の廃止に伴い、政府は「基金訓練」の一環として「合宿型若者自立プログラム」として若年無業者の自立支援を2010年4月より開始しました。このプログラムは、 「就労訓練」として、かなり高度な「社会的スキル」「ビジネススキル」「コミュニケーション能力」を要求され、今までの若者自立塾にやや不足していた就労技術を身につけさせていくことにより、企業への就労に導こうとするものです。若者自立塾の理念の基にこれらの新しい「合宿型若者自立プログラム」を若者に対して教育していくことができれば、理想に近い就労教育が可能であると思います。
 現在基金訓練を実施している18団体はどのような位置づけで「基金訓練」を行っているのか、調査したアンケートの内容を踏まえてこれからの若者の自立支援の新しい形を探っていきたいと思います。

※ アンケートは平成22年10月末に実施しました。対象は旧若者自立塾団体で現在基金訓練を行っている18の団体に対して行いました。回収団体は8団体であり、統計的には信頼度は高くはありませんが、質問項目中7ないし8の団体が反応している項目は基金訓練を行っている団体の総意として判断することにしました。

1・若者自立塾での指導と基金訓練での指導における意識変化

1-1 生活指導など日常的な指導管理

 生活指導などの日常的な指導管理は7団体が変化なしと回答している。生活訓練などの基礎訓練については従来通りの対応をしており、「基金訓練」を行う事による「日常的な生活訓練」への指導変化は見受けられない。ひきこもりなど社会参加のしづらい若者の自立支援については共同生活が根本的な土台となり、すべての訓練はその上に成り立つという指導方法をどの団体も実施していると理解できる。

生活指導など、日常的な生活管理変化
変化はない 7
指導、管理が難しくなった 1
指導、管理が楽しくなった 0

数字は団体数(以下同様) 1団体は沖縄

1-2 就労訓練などの指導

 就労体験、講座指導などに要する時間は3団体が変化なし、5団体が増えたと回答しており、減少したと感じた団体は0であり、さまざまな訓練に対応することへの負担が見られる。従来の若者自立塾においてはもちろん「就労訓練」は行ってはいたが、今回の「基金訓練」に見られるように厳格にカリキュラムを組んで行うものではなかった。
「カリキュラム重視となり、深い指導ができない」と回答している団体があるようにカリキュラムをこなすだけでかなりのエネルギーを費やしてしまうという記述が見られた。

就労体験、講座指導などに要する時間
変化はない 3
増えた 5
減った 0

1-3 塾生との係わり方

 塾生徒の係わり方については、大半(5団体)が変化なしと回答しているが、増えたと答えた団体は0であった。

塾生徒の日常的な係わりかたの変化間
変化はない 5
係わる時間は増えた 0
係わる時間は減った 3

本来、若者自立塾での指導は「日常生活を基本とした訓練から社会へ」というものであり、 共同生活を通じて「社会スキル」「「コミュニケーション能力」を身につけていき、あくまで「社会のなかで生きる力」を涵養することが目的であった。そこには、スタッフと塾生との人間関係の構築が基本にあり、「ビジネススキル」「資格」等の就労へのツールの取得はその後の問題であると認識していた。しかしカリキュラムを消化していくことで一杯になり、本来の目的である「塾生の心理的解決、人間関係の構築など」がおろそかになって「カリキュラムを徹底して取り組ませ、夜に心理支援等カウンセリングを行っているのが現状。スタッフのストレスがとても多くなった」と指摘する団体もあった。


2・基金訓練における生活指導費の取り扱いについて

生活指導費については別途請求している団体は2団体(知心学舎・はぐれ)であり、訓練費に生活指導費も含まれていると解釈している団体が2団体、特に請求していない団体が4団体であった。

若者自立塾における奨励金の位置づけとしては総合的な支援奨励金であり、若者を全人格的に支援することについての訓練費用であると解釈しても構わないであろう。つまり若者自立塾の「若者支援」の捉え方として共同生活を通じて若者の「勤労意識」の涵養を行い社会参加への支援とするという理念が底流にあった。そこには「就労支援」「生活支援」「心理支援」などの明確な区別は無かった。

3.旧社会経済生産性本部にあたるような統括機関は必要か。

8団体全てが「統括機関」はあったほうがよいと回答している。 その理由として

  • 情宣・企画などの活動が自己団体だけでは不十分と回答した団体が6団体
  • 他団体の情報が不足していると回答した団体が4団体
  • 他団体との交流機会はあったほうがよいと回答した団体が5団体
  • その他 1団体(他団体の活動など参考にしたいがうまくいかない)

旧若者自立塾における、情宣などは各団体でも独自に行っていたが、総合的な宣伝活動はほとんど生産性本部が企画・運営をしていた。団体の日常的な業務は、塾生の指導支援活動が中心であり、活動の大半は若者の自立支援の為の訓練である。経営的にも情宣・企画のための専任のスタッフを置くわけにはいかず、どうしても活動が不十分にならざるを得ない。また、他団体の情報がわからず、手探りの状況で活動をしている。情報の共有化によるメリットが得られにくいのが現実である。
資金面として情宣活動の為の活動奨励金も助成金の一部として組み込まれておりその点でも恵まれていた。
「統括機関」の考え方にはいろいろあると思うが、具体的な考え方を指摘した団体は無かった。たとえば私見としては地域ごとの小グループの取りまとめ団体を選出し、その代表が全国的な統括を行うという案はどうであろう。もちろん取りまとめ団体は持ち回りでも構わない。一つ一つの団体の力を併せて行政等に働きかけていくという行動が必要な時期に来ているのではないだろうか。

4.基金訓練におけるスタッフの問題

4-1 指導員の資格要件について

指導員の資格などの対応は 7団体が従来のスタッフで対応した。

指導員の資格要件について
従来のスタッフで対応した 7
外部スタッフを採用 1

     1団体ビバ

4-2 スタッフへの負担変化

報告書の作成などスタッフへの負担は 特にないが2団体、負担が大きいと答えた団体が6団体、負担が少なくなったと回答した団体は0であった。

スタッフへの負担変化
特にない 2
負担が増えた 6
負担が減った 0

4-3 生活給付金について

訓練生への給付金の支給割合は大体給付されていると回答した団体が8団体であった

スタッフの資格要件は若者自立塾においてはそれほど厳しい条件は無かった。それは再三述べているように若者自立塾の支援理念が若者の全人格的な支援であり、スタッフにはっきりとした資格要件は問わなかった。もちろんさまざまな「スタッフ養成」「資格」取得の講座は行っていたが、あくまで付随的な案件だったように思える。
 ここで問題となるのはやはり、スタッフへの事務処理などの負担感が増したと答えた団体が6団体あることではないだろうか。「指導に要する時間」「統括機関の問題」などいずれもスタッフへの負担増へのベクトルを向いているような気がする。
 給付金の支給については低所得層への塾への誘導など、若者自立塾では困難なケースも吸収できたことは「基金訓練になり生活給付金が受けられると言う面では低所得者層にも間口が広がり、若年者に向けてチャンスは広がったように感じられる。」などのように塾の評価は高い。
給付金の申請に要する時間の負担

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