男子を指導中に女子が休み始めた

- 不登校引きこもり Q&A 教育新聞連載 No.1 -

Q 小4の担任です。私の学級にはふざけていて落ち着きのない2人の男の子がいます。一時は学級に落ち着きが無くなってきましたが、教頭先生や学年主任の先生が学級を落ち着かせるためにクラスに入り、時々指導をするようになっては、いますが、まだ子どもたちが授業に集中できるような環境にはなっていないと感じています。そんな時、ある女の子が数日前から休みはじめました。担任として、クラスのことも気になるのですが、その子に対してどのように関わったらよいのでしょうか。

A 昔、10歳前後の小学4年生の子どもを「ギャング・エィジ」と呼んでいた時期がありました。この時期、保護者や先生の保護や干渉を離れて、ようやく、少しだけ自分の判断や考えで、主に今まで禁止されていたことを行って、お目玉を受けながら自分の行動範囲を少しずつ獲得し、自発性を伸ばし活動範囲を広げていきます。そして、大人になるプレリュードとしての思春期に入っていく準備をしていきます。子どもの発達から考えると必要な行為ですが、大人から見ると困る行為をするので「ギャング・エィジ」と言いました。

 しかし、クラスを学級経営する先生の立場からすると授業妨害はするし、はっきりしませんが、級友の女の子が休み始めた遠因になっているかもしれないので、困った存在の男の子になります。男の子達の行動をそのままにしとくと、学級崩壊に結びつく可能性もあります。
 教頭先生や学年主任と協力し、その子らの気持ちを聞き、信頼関係を築き、理解し、ダメなものはダメと、根気よく指導していく必要があります。
 一方、女の子は数日前から休み始めたとありますが、この段階で不登校と決めつけて対応をしていくことは、不登校に対する先入観で対応してしまうので誤りが生じます。「どうして学校に登校できないのだろうか」という、素朴な疑問から捉えていく必要があります。
 そのために、最初は保護者と連絡を取り、本人の様子や話している内容を聞きましょう。そして、本人が先生と「お話したい」とか、「しても良い」という様子ならば、家庭訪問し本人のお話をゆっくり聞きましょう。そして、登校できない核心部について話すことが、できたら、「そんなことないよ」とか「そうではないよ」と、いった本人の発言を否定するようなことは、その時はいわずに、本人の意見をオウム返しし「そんな思いだったんだ。先生気がつかずにごめんね!」といってあげ「また、来てもいい」と、同意を得て、その日は帰りましょう。
 あるいは、先生と「話してもいい」といって、家庭訪問しても、無言で何も話をしてくれない場合もあります。そんな時は、先生に助けて貰いたいでも、自分の気持ちがまとまらず話ができないこともあるので「無理してわかるように話さなくていいよ。気持ちだけで良いから、言えば、気持ちが楽になるよ」と、声をかけてください。例え、お話しができなくても、泣くことができ、「辛い思いさせたね」と先生が声かけできれば、子ども気持ちはぐっと楽になり、先生への信頼感は増すはずです。
 そして、保護者には「焦らないでください。しっかり対応しますから、何かあれば、ご連絡ください。また、近いうちに家庭訪問しますから」と、いってください。本人と保護者との信頼関係が築ければ、必ず、解決の道は開けます。

 しかし、本人が家族に何も話さず、先生には会いたくないということでしたら、事態は深刻になります。そんな時は、前学年時と今学年に入ってから様子に違ったことがないか、級友との人間関係を含めたトラブルはなかったのか、ストレスや様々な負担から身体症状はなかったのか、保護者の協力を含めて情報を収集しましょう。その段階で、教頭先生、学年主任や養護の先生を含めたチーム対応の準備を始めましょう。
 そして、情報を元に、あらゆる角度から考え、いじめなどの明確な原因が分かれば充分に対応案を練って対応し、チ‐ムで協力し、解決を図る必要があります。そして、子どもの不安要因を取り除く必要があります。学校には安心して登校できる環境を作る責任があります。
 しかし、原因がわからない場合もあります。実は不登校の場合、初期に原因が明確なのは解決が比較的やさしいのですが、原因が複雑に絡み合っている場合や発達障害が絡んでいる場合もあります。そんな時、不登校のきっかけになったことを原因としてしまい。さらに問題を複雑にすることもあります。
 もし、このケースで本人が家庭訪問を拒んだ場合、担任が授業を妨害する児童に対し、皆の前で、強い言葉で指導した結果、それを自分にいわれた感じがして、先生が怖くなった可能性があります。そんな時は女の子と以前の担任や養護教諭等、信頼関係が強い先生が家庭訪問し、気持ちを聞きだしてあげて誤解を解く必要もあります。
 キーワードは「苦しんでいる子の気持ちに寄り添って」です。

平成22(2010)年6月3日(木曜日)教育新聞掲載 文責 牟田武生