不登校-その時、親はどう関わるか

VII. 教師が気をつけなくてはいけないこと、学校や友達(生徒)ができること

子どもが不登校になる前には必ずまえぶれがあります。そして、次のような症状が起きてきます。

状態面では

  • 学習に集中出来なくなる。
  • 忘れ物が多くなる。宿題を忘れる。
  • 遅刻が多くなる。

心理状態では

  • 理由がなくイライラする
  • 原因もないのに落ち込む
  • 「おっくう」だったり「かったるい」感じがぬけない。
  • 「ぼんやり」することが多くなる。
  • 何となく「不安感」がある
  • 他人との気分的なズレを感じる
  • 寝つきが悪くなり、長い時間眠っても寝た感じがしない。

あなたのクラスの子どもでこのような状態の子どもがいたら、皆の前で詰問したり、叱責をすることは絶対にしてはいけません。必ず1対1になれる部屋で様子を聞いてください。それも子どもが話し始めたときを除いて出来るだけ、短時間で済ませるようにし、「先生は心配しているよ」と言う気持ちが伝わるようにすることが大切です。無理やり気持ちを聞きだすことはしてはいけません。ちょっとした話し合いの時間を何回も取り、子どもとの共有感を作り出し、信頼関係を深めていき、子どもが自然に話せるような雰囲気を作っていくことが大切です。そして、子どもが自分の状態とか気持ちの奥にある話をし始めたら、時間の許す限りしつかりと聞いてあげましょう。また、話した内容について否定したりすると、子どもは自分自身を肯定できなくなり、否定的な見方が強くなってしまうために、動けなくなることが多くなるからです。さらに、必要以上に励ますことは避けてください。「頷き大変だね」と、気持ちを受け止めるだけで十分です。また、子どもとの信頼感を保つために、守秘義務は絶対に守ってください。

まえぶれ期、子どもの不安定な気持ちを受け止めて上げることにより、ストレスは減少し、子どもたちは「少しすっきりした」「気持ちが楽になった」「また、話に来ても良いですか」等の言葉を言います。これだけで不登校にならずに済ませられる子どもたちは相当数います。

しかし、先生の努力にも関わらず、不登校に陥ってしまう子どももいます。子どもがいったんひきこもってしまうと、家庭訪問しても会えないことが多くなります。子どもが会うことを拒否している間は無理に会うことは止め、支えている親の方との信頼関係作りと、相談役になってあげてください。信頼関係を得る最大のポイントは先生として会うのではなく、ひとりの人間で、自分自身も悩みながら生きている姿勢を示すと、お互いに共感を持つことが出来るので、親との距離はぐっと近づきます。特に母親が精神的に安定している場合と不安定の時では、子どものひきこもりの長さに大きな差が出ます。

子どもの抱える不安が具体的な不安、

例えば、

  • 遅れてしまった勉強をどうしょうか。
  • 体力が落ちてしまったどうしよう。
  • 友達に会いたいと思うが皆は自分のことをどう見ているか気になる。
  • 進学のことが気になる。
  • 修学旅行へは行きたい。

等が不安の中心になってきて、家中心の生活から親と一緒ならば外出できるようになって来たら、親の方の判断の基に、子どもの意思を聞いて家庭訪問をしましょう。子どもの不安を先生が解く鍵を持っていることを子どもが、判断出来れば必ず会ってくれます。その時は子どもが不安に感じていることだけについて、答えてあげましょう。先生の職業的癖として付いている「登校勧誘としての説得」は絶対にしないでください。あくまで子どもの心のペースを大切にしてください。

家庭訪問の時に出た子どもの要望を叶えるような対応がつづけば、信頼感とともに子どもの中にあった不安や緊張感は次第になくなってくるはずです。子ども達は具体的に自分の抱えていた問題を乗り越えて行く経験が、増えれば、増えるほど、自信が出てきて思考や感情が、自己肯定的なものに変わっていきます。それが再登校への力になります。

それでは次に友達ができることについて、少しお話をします。

ひきこもりの不登校になっても、小さい頃からの少数の友達だけとは付き合っている場合があります。良く話を聞いてみると、その友達は、不登校になっていようがいまいが、関係なく付き合ってくれて、しかも、不登校している子が嫌がる「学校のことや勉強のこと」は、聞かなければ、言わないから楽だと言います。そういう友達は宝物です。友達はいないより、いた方がよいにきまっていますし、ひきこもりの長さ、深さ、言葉を変えるなら、深刻さも違います。しかし、先生や親の差し金の友達は拒否します。ですから、これも親や先生の判断や結論ではなく、子どもの判断にゆだねた方が良い結果が出ます。