不登校-その時、親はどう関わるか

VI. 父親がしなければならないこと

以前では、「子どもの教育はお前にまかせていたのにこんなことになってしまった」と、お母さんを責めるお父さんはいました。しかし、最近では流石にそのようなお父さんは少なくなってきました。でも、子どもが思春期に入ると何となく父親を煙たがったり、避けたりする傾向は発達段階上で必ず起こります。そのため、父親は何となく子どもと疎遠になり、家に居心地の良い精神的な居場所が見つけられずに、仕事に依存していく「逃げ」が起きやすくなるのは、どこの家庭でも同じです。しかし、ひきこもりを伴う不登校の子どもは、自分自身の作り直し、大げさな言葉で表現するなら、再誕生をしているので、父親を激しく拒否したかと思えば求めていることもあるので、母親の精神的な支えになってあげることと同時に、子どもの状態に応じたタイムリーな対応が大切になります。

子どもが父親を激しく拒否している時は次のような時です。
  • 自分の気持ち理解せずに、むやみに登校刺激を加えてくる時。
  • 父親が子どもに対して、登校刺激を行なっていない時でも、社会に出て毎日働いている父親は動く登校刺激に思え、動けない自分は存在価値のない人間に思える時
  • 母親に退行している時、本当の気持ちとしては母親を独占したい。父親はうざったいと思える時
子どもが父親を求める時
  • 母親への退行をほとんど終え、母親を通して父親が自分を否定していないと確認が出来、父親にも直接確認をしたくなった時
  • 学校や社会に出ようとするが、踏み出す勇気が出ない時

赤ちゃんが母親を求め、母親との共感関係を終え、母親からもらった真綿で包まれるような基本的な愛情と信頼関係の上で、父親に対して違った愛情を2~3歳位になると求めるようになります。ちょうどそれと似たような感じで父親を求めてきます。父親への確認は、母親への退行と違って、自分を否定していないかが中心になります。父親に対して自分を受け入れてくれている。否定されていないなどの確認が済むと、ひきこもりがちだった子どもでも、自分が好きなこと、たとえば、Jリーグの観戦やつりなど父親が誘えば外出するようになっていきます。子どもが女の子でも、行く場所が違っていたり、母親も一緒だったりと条件は少し変わりますが、心理的には変わりがありません。そんな状態になったら、子どもが行きたいところは金銭的に許す範囲で、ドンドン父親の役割で誘い出しましょう。

その時子どもの心は、ひきこもっている時、「人が自分をどうみているか気になって、他人の目が怖かったが、慣れてくると気にならなくなった。私のことなど皆、全然気にしていない。自分自身、変な人でも、おかしな人でもない」ということがわかってきます。

母親が情緒や精神面を安定させる役割の愛情を与え、父親が社会に出て行くための力と勇気を与えてくれる愛情、というように、子どもたちは愛情を性差によって使い分けていきます。

父親が充分な役割を果たさないと、子どもは退行のまま、母子蜜着が起き、母親を隷属させるような関係になり、大変、長いひきこもり状態が続くことが多いので、父親のはたす役割は大変重要なものになります。