ネットゲーム依存への対応

- MSN-Mainichi INTERACTIVE No.9 -

 ネット依存は本人が抜け出そうと思えば簡単だが、実際は依存なのでそのようにはいかない。そこで、親がどのように対応していけば良いのかを臨床事例から考えてみることにしよう。

 背景に不登校や出社拒否等の人間関係の問題があった人達がネットゲームにはまったグループとゲーム好きがネットゲームにはまり、ひきこもったグループの2つに分ける。
これは表面的には「にわとりが先か、卵が先か」の議論に似ているが、こころの状態像が全く違うので、対応は違うから注意が必要だ。
グループに分けるためには次のことを参考にしてください。

<グループ1>
人間関係の問題が過去にあって、ひきこもりの人がネットゲームにはまった時の声

・不登校や出社拒否になった人は、現実社会の中で何となく生き難さや居心地の悪さを体験している。(生き難さ・居心地の悪さ)
・ 現実社会の人間関係で自分の居場所を作れなかったという挫折感を持っている。
(人間関係での挫折感)
・ 現実生活の中でストレスを蓄積させて、不眠などの体調不良感を体験したことがある。(ストレス)(体調不良)
・ 家族の人に自分の気持ちを分かってもらえずに、辛らかった思いをしたことがある。
(家族の無理解)
・ 自分がどうして学校や会社に行けなくなったのか悩んだ経験がある。
(過去の悩み)
・ 廻りの人が自分のことをどのように見ているか気になる。
(人の目が気になる)
・ やろうとおもえば何でも出来るという自己万能感があるが、実際には自信が持てない。
(自己万能感の裏返し、自信がない)
・ 何かを判断する時に現実社会では、優柔不断になってしまうが、仮想現実の世界ではすばやく判断が出来る。
(優柔不断)
・ いつかは、他人を見返してやりたいと言う気持ちがある。
(他人を見返す)
・ 家族とはまだどこか理解し会えないところがある。
(家族の無理解)
・ 現実社会では、友達はいない。オフ会に参加したいと思うが、現実には行けない。
(友人がいない)

<グループ2>
ゲーム好きの人がネットゲームにはまってひきこもったときの声

・ 元々ゲームが好きだったが、こんなに面白いゲームは初めてだ。
(ゲーム好き)
・ ゲームにはまりこんで、もう少し、あとちょっと、と思っていたら何時の間にか夜が明けていた。それでも、学校や会社に行っていたが眠かった。
(自制力の弱さ)
・ ゲームを止めて、明日があるから寝ようと思うがゲームの誘惑に勝てなかった。でも、本気を出せばゲームはいつでも止められると思っている。
(ゲームの誘惑に勝てず)の裏返し(何時でも止められる)
・ いつかは、ゲーマーになってやると思っている。
(正当化)
・ 現実社会でも友人は沢山いる。オフ会で知り合った友達もいる。
(友人多し)
・ 自分の気持ちは家族の誰もわかってもらえない。
(家族の無理解)
・ 罪悪感は少しあるが、学校や会社に行こうと思えば、いつでも行けるから、自分は不登校や出社拒否とは思っていない。
(正当化)
・ 今は楽しいし、充実している。誰にも壊されたくない。
(現状維持)

 結論として、グループ1(不登校・出社拒否/ひきこもりが背景)のタイプはネット依存ではなく、人間関係のスキル不足や過去の出来事から来る心理的な心の傷があり、それが原因で後悔の感情や自信になさが本人を支配している。また、本人の活動力の源になるはずの親子関係にも問題傾向がみられるので、改善をしなければなりません。ネットゲームを続けているのは、むしろ、過去の失敗体験から来る「見捨てられ不安」に支配されているからです。パソコンを力づくで、取り上げたり、ブロードバンド(常時接続)を解約することよりも、親子のコミュニケーションを豊かにするために、子どもの目線まで親が降りていき、時にはゲームの世界を共有化して行くなどして、子どもの気持ちをしっかりと受け止めて上げることが何よりも大切です。

 心の傷は子どもが本当に安心できる相手なら、自分の方から過去の出来事を話し始めるはずです。そして、自分の気持ちを理解してもらえばもらうほど楽になり、自然に心の傷も癒えてきます。それが完全に出来るようになると、無気力感がなくなり、心にエネルギーがたまり始め、徐々に動き始めるはずです。

 自分自身で行動できる範囲で動き始めて、出来事の確認行為を通して、誰かに見捨てられてしまうのはないかという「見捨てられ不安」を少しずつ解消していきます。見捨てられ不安がなくなれば、なくなるほど、自然にオンラインゲーム(仮想社会)からも、距離ができ現実社会に戻ってきます。(翼君の事例です)

 グループ2(ゲーム優先)は自制心がなく、ゲームに依存している様子がみられます。このまま本人が望むように現状維持が続くと、ネットゲームの世界が全てになっていくネット依存になっていく可能性が高いと考えられます。少しでも、「学校や会社に行かなければならない」という罪悪感があるうちに、ネットゲーム依存であることを告げ、ゲームを規制していくための話し合いをしてください。

 もし駄目なら、その時は、父親が父性を発揮して、厳しく対応することが大切です。
もし、父親が不在だったり、機能しない場合は母親の父性でも構いませんし、それに代わる人でも結構です。それでも、効果がない時は期限を切って、(例えば2週間後とか)実力行使してください。最初はふてくしたり、反抗もあり、ネットカフェに入り浸ったりしますが、親が根負けしたり、妥協しなければ、現実社会に友達もいることだからその力で戻っていきます。

文責 牟田武生