ネットゲーム オフ会の出会いで

- MSN-Mainichi INTERACTIVE No.7 -

 翼(仮名中3)がネットゲームを始めて半年が過ぎた。
ゲーム上での地位が上がればあがるほど現実社会の人間関係は遠のいていく、会話を交す相手は母親だけの日々が続く。母はネットゲームを理解し、ゲームを止めさせようとする父とたたかってくれている。

 母は信用できる。僕の味方だ。でも、肉声で会話する相手が母だけでは虚しい。そんな気持ちの翼の元にゲーム仲間からオフ会(ゲーム以外に現実世界で会うこと)の誘いが届いた。

 ゲームの中で苦労を共にして戦っている人達だ。でも、会ったことは勿論ないし、学生なのか働いているのか、何歳なのかも全員わからない。しかし、ゲーム上のキャラの性格や考え方も手を取るようにわかる。毎日、何時間もゲームの中で会っていると、昔からの知り合いのような錯覚を覚えたりもする。現実社会で会ってみたいという感情は、他人に対する不安よりも強かった。勿論、同志だから不信感はない。

 オフ会には10名ほどの人が参加していた。互いにキャラ名で名乗る。翼より年上の20歳前後の人が多い。初めて会う人ばかりなのだがすぐに話が盛り上がる。ゲームのことや掲示板(インターネットの中にある掲示板)のことについて情報交換が盛んに行われる。最初は年下だから馬鹿にされるのではないかという不安もすぐに消えた。我を忘れて会話の中に入っていく。とにかく楽しかった。他人と話すことはこんなに楽しいことなのだとあらためて思った。

 皆、専門学校や大学・高校に行っている。社会人の人もいる。ゲームの世界だけに生きている人なんかいない。年齢や職業・学校に関係なく、お互いに立場を認め合って会話をしている。大人なんだ!大人達は子どもと違って、皆、こんな人間関係を築いているのだろうか。だが、両親や学校の先生方の人間関係を垣間見ても分らない。

 家に帰り、母親にオフ会の話をした。母親は興味深く翼の話を聞いた。
翼は母親に「学校の担任には会いたくはないが、お互いに誤解があるかもしれないので、いずれ話そうと思う。しかし、今は先に確かめたいことがある。」
 「僕にできる短期のボランテイア仕事はないかなぁー。大人のひと相手が良いのだけれども」と言った。母親は知り合いの友人がいる介護福祉センターを紹介した。

 介護福祉センターでは、車椅子を押したり、おむつをたたんだりの雑用仕事をしながら、職員同士の人間関係や職員と介護されるお年よりの関係を観察した。学校と同じように小さなトラブルは起こるが、相手の人格を否定するような言動やいじめはない。大人達は仕事上で起きたミスを理由に、一方的に責めるような言い方はしない。まして、自分のストレスを相手にぶつけるようなことはほとんどない。

 中学校は異常なところなのかもしれない。自分を含めて、まだ、未熟な子ども達だから仕方がないのかもしれない。また、学校が少人数学級で先生がもっと、ゆとりを持って子どもの気持ちを聞いてくれれば良いのにと思う。そして、先生が先入観や偏った情報だけで判断しないで、相手を認め、話を聞き、気持ちを理解して欲しいと、翼はオフ会やボランテイア体験を通して感じていた。

文責 牟田武生