禁じられたインターネットゲーム

- MSN-Mainichi INTERACTIVE No.4 -

 翼の心の平和は一ヵ月と続かなかった。
ネットゲーム中心の生活になった翼に対して、両親からの干渉が始まったのだ。

 「そんなにパソコンをやり続けると目に悪いから、1日2時間だけにしなさい」程度の
母親からの指摘だった。しかし、ネットゲームにのめりこんでしまった翼の耳には入らず、
一日中部屋にこもってやり続ける翼に父親は無理やり部屋に入り込んで一方的に説教をするが、父親が寝た後や会社に行くと、また、翼はゲームの世界に入っていった。

 その頃、両親は翼がネットゲームにのめりこんでいくのは暇でなにもやることがない。 そこで時間つぶしにやっている間にゲーム依存になってしまった。
今は自制心が働かなくなっている。強制的に止めさせなければ、アルコールや薬物依存症のように止められないのではと判断した。

 彼が外出している隙を見て、ノートパソコンを取り上げ親類の家に預かってもらった。
帰宅した翼はパソコンをしばらく部屋中を探していたが、そのうち、二階から降りてきて「パソコンどこにやった。すぐ返せ!あのパソコンは中学生になった時、お爺ちゃんがくれた。俺の大事なパソコンだ。早く返せ!」と大変な剣幕で母親を怒鳴りつけた。

 母親が「私は知らない。父親に聞いて」と言った瞬間。
 「あんな奴に俺の気持ちなんか分かるものか」とわめき立て、ソファーセットをひっくり繰りかえし、リビングの壁を思いっきり蹴飛ばし、大きな穴を開けて、自分の部屋に戻って行った。

 父親が仕事から帰宅し、リビングにできた大きな穴を見て、翼の部屋に行きドアのノブを廻すが、ドアは部屋の中から机などでバリケードが築かれていて、入ることが出来ない。父親が「話し合おう」と声を掛けるが、翼からは何一つ返事は返ってこなかった。

 父親は「やっぱりアルコールや薬物依存と同じだな。取り上げるとしばらくは禁断症状が出て暴れる。まだ、翼は時期が早かったから、軽くてすむはずだ。しばらく、様子をみよう」と母親に言った。

 しかし、翼の家庭内暴力は続いた。父親が会社に行くのを見計らって、家中パソコンを探して、滅茶苦茶にしていった。そして、どこにもないとわかると、母親に殴る蹴るの暴力を始め、パソコンを買えと要求した。暴力に耐えられなくなった母親は一日仕事のパートに出た。

 翼は家にあった小銭を集め、自分のこずかいをためたお金を足して中古のパソコンを買った。

文責 牟田武生