2008.4.5
富山県宇奈月「日韓・不登校、ひきこもり、ニート国際セミナー」
韓国の引きこもり現況と対策(日本語版)
東南精神科医院
精神科医 呂 寅 仲
1.韓国の引きこもり現況と対策
1)実態調査
(1) 2002年,世界精神医学会(横浜)
-本院を訪問した孤独な人(引きこもり)患者(2000.1〜2002.5月まで28ヶ月の間2,409人中31人)を対象に臨床から見た本人の様子や実態などを研究し発表する。
- 2000.1〜2008.3月を基準としてみた時、本院を訪問した患者4,807人中、引きこもり症状を訴えて訪問した患者数は総218人 (この中2007.3 〜 2008年3月まで12ヶ月間30人である。2002年の研究と比較し引きこもりの患者数の増加)
->これは,本院に対する認知度を反映するということかも知れないが、社会的認識、両親の問題意識が高まって、専門家を探す比率が高まったことを意味している。
2) 2005年,国家青少年委員会
-東南精神と青少年相談院が共同で主管して、実態調査実施
->一般高校生を対象に‘引きこもり不適応青少年’という名称もと、隠遁(いんとん)の危険性がある青少年の現況と実態を調査(1,461人)。
->実態調査結果、全体人文系高校生の0.3%が高危険群、2.3%が危険群、潜在群7.1% (危険群を含めば9.4%)で現れる。
症状 |
高危険群 |
危険群 |
潜在群 |
登校や社会的関係を拒否して家にだけ留まっている経験 |
0 |
0 |
0 |
友人がいない、または1人 |
0 |
0 |
|
学校を辞めたことがある |
0 |
->政府次元で関心を持って調査研究を始めたという点では意味あることであるが、現在隠遁しているひきこもりの人に対する実体把握ではないという点で、このような研究結果をひきこもりの人に対する実態調査として一般化するには多少無理がある。したがって、正確な実態に対する理解なしで国家的な次元の介入計画を立てることは、多少無理があると考えられる。そこで実際に引きこもりの人に接することになる病院や医院機関などでの経験的で実践的な知恵を活用して、自らのプログラムを模索し援助することが最善である。
2)介入および治療
(1)本院
#東南精神と引きこもりの人の介入マニュアル
●両親モニター:子供の一日の日課(起床時間、食事、何をしながら過ごすのか..)
本人の様子(家族との対話、葛藤など)
問題行動( violent behavior/暴言,暴力、器物破損など)
変化したこと(気持ち、行動…可能ならば肯定的な変化)
両親の反応(子供の行動に対する反応)
@家庭訪問
-大部分の引きこもりの人は、治療機関が直接訪問されないようにするので精神保健社会福祉士が家庭訪問実施する。
-他の精神疾患(統合失調症,うつ病など)との鑑別診断を主目的であるが、患者が協調的な場合は相談を実施し、病院での受診を受けるように説得する。
AMentorプログラム-型,
‐兄姉と同じ年頃のMentorとの出会いを通じて、自然な対人関係技術教育のために実施する。
‐引きこもりの人とMentor間の移転(transference)現象のために円滑な進行が多少難しい場合がある。
(注)Mentor…ギリシャ神話「Odysseusがその子の教育を託した良き指導者」
B個別相談
-家族および引きこもりの本人が外来F/Uしながら進行する。
-危機介入、受容的相談の実施する。
-必要時には投薬治療を並行して行う。
C集団プログラム
-隠遁状態から抜け出して,ある程度活動をしている状態の引きこもりの人を対象にしながら,個別相談と並行して進行する。
a. 目標
-同じ年頃との自然な付き合いができる場の提供(病院内free space設置)をしながら、元気な人間関係を経験できるように援助
-自らを客観的に把握できる機会を提供し、新しい環境や変化に対し対応する力を付ける。
-自身の未来を設計して、それにともなう個別計画を立て、実践することができるように援助する。
b. プログラム(6週:週1回/ 4時間)
-自我探索(心理テスト)
-進路探索(進路,適性検査実施)
-職業探索(就職関連情報収集など)
-自我成長(リズム治療,認知行動治療,社会技術訓練など)
-余暇活動(美術展,音楽会,映画観覧など)
Dリズムキャンプ
‐最近の研究では、リズム感は身体、精神的の健康に多くの影響を与えることが分かって来た。リズム感は音楽の要素でだけでなく、日常生活の色々な部分でもみられるのに,私たちが自然に行っている深呼吸、歩くこと、噛むことなど、このような全てのものらがリズム運動と考えられる。
-現代人らは忙しい生活の中で腹式呼吸よりは短い呼吸を自然に行っている。また、歩く時間も減って食習慣でも、たくさん噛まなければならない食物より、インスタント(ファーストフード)中心の手軽な食物を好んで食べ、咀嚼する量(かむ量)が私たちの両親世代に比べて、はるかに減っている現実である。
-このような日常生活の中リズム運動の減少は、感情をコントロールして統制するセロトニンの分泌を減少させ、私たちの精神健康にも悪影響を与えることになるという研究結果も報告されている。
-引きこもりの場合一日中大部分の時間を自身の部屋に閉じこもって、コンピュータで過ごす時間が大部分であり、日常的な生活のリズムが壊れ不規則な食習慣、栄養の偏り、運動不足が起き、健康の悪化する場合が多い。
‐引きこもりの人は色々な面でリズム運動が不足している。そういう意味でリズム治療は人間関係を結ぶ初めての段階で効果があがる。またストレス解消にも役立ち、生活活力を生み出すことができる。
a. リズムキャンプの目標
-キャンプ参加を通じて規則的な生活習慣を体験し、日常生活の中でリズムの回復を通して、情緒的安定(精神健康)企図
-リズムを通した感情表現(自己表現)
-リズムを通したコミュニケーションおよび人間関係体験
-元気な対人関係経験を通じて、自尊感を回復
-ストレス解消
b. プログラム
-External rhythm(動的):ドラムなど打楽器、サムルノリ、トラッキング、マラソン、野外活動など
-Internal rhythm(静寂):大極拳、瞑想
-Spiritual(emotional) rhythm:pet program、人間関係訓練
2005年7月:京畿道(キョンギド)/ 3泊4日(日本4人参加)
2006年5月:ソウルユースホステル/ 4泊5日(日本6人,韓国5人参加)
2006年10月:済州道(チェジュド)/ 3泊4日(日本5人,韓国4人参加)
* 2006年5月,10月キャンプは国家青少年委員会の支援を受けて実施した。
E両親会
-引きこもりの人・学校不適応・不登校・ネットゲーム中毒などの困難を経験している子供がいる両親が対象(本院に訪問したとか関心があるご両親らが参加).
-子供による家族らの心理的困難と彼らの葛藤,問題状況での対処技術らを討論して効果的な解決策を共に模索し共有するため。
-2008年2月29日初めての集い実施. 今後分期別実施予定である。
(2)政府次元(国家青少年委員会)
-2005年:国家青少年委員会傘下機関の韓国青少年相談院で家庭訪問を通じて,不適応青少年に対する介入を実施する青少年パートナー(Youth Companion)事業開始.
-2006年:キャンプ実施2回(本院)
大韓青少年精神医学会支援
-深刻な引きこもり不適応青少年の原因糾明および治療(予防)のための家庭訪問事業実施(ソウルおよび京仁(キョンイン)地域13ヶ精神保健センターおよび病院・医院/ 41事例
3)今後の対策
(1)既存のプログラム(集団プログラム,キャンプなど)持続
(2)両親教育および両親会運営
-両親の力量強化/変化を通した両親
-子供関係改善
(3)専門家教育
-子供たちの問題様相は持続的に変化しているのでこのような問題らに弾力性あるように対応することができるように、臨床現場での経験を関連機関(学校,相談機関,政府部署など)担当者らに教育
(4)社会全般の認識転換は
-報道機関の実態報告は引きこもりらの極端な姿だけを強調して,否定的なイメージを深刻化させている。
-言論報道を担当する関係者(PD,記者など)に対するレクチャー
-引きこもりの人を素材にした映画にレクチャー (シナリオ企画段階から)
(5)伝統家屋を活用した寄宿プログラム(または危機介入のための憩い場)推進
-引きこもりの人とその家族間の葛藤と情緒的混乱状態を克服するための物理的隔たり(距離)を提供
-彼らに刺激を与え、変化させ、引きこもりの青少年らがその間経験できなかった新しい環境としての空間を提供する。伝統的な価値と生活方式を体験できる教育的な空間、ストレスが多い都心を抜け出し、自然を感じて余裕があることを経験できる空間として伝統家屋を活用する。
-孤独な人青少年らの憩い場
->一時的に家族との分離が必要な青少年の入所施設で活用
->都心に位置した一般的な憩い場とは違った差別化された雰囲気で運営(田舎親戚の家と同じ懇意な雰囲気)
->韓国的な情緒を土台にした憩い場プログラムを入所青少年らの状況に合わせて、融通性あるように運営
-孤独な人青少年の国際交流の場
->韓-日引きこもりの人キャンプ時宿舎で活用
->古民家を活用した多様な体験プログラムが可能
呂寅仲(ヨ・インジュン)
韓国ソウル市東南精神科医院院長。1959年生まれ。韓国中央大学医学部卒業。米国UCLA摂食・障害クリニック、韓国ウルチ病院精神科科長、青少年精神医学会理事、国際リズム治療学会会長を経て、現職。ひきこもり、対人恐怖症、統合失調症を専門としている。韓国のひきこもり研究の第一人者のひとり。
(監修 牟田 武生)