不登校、ひきこもりの子ども、家族への援助

天理市第46回心を育てる教職員の集い講演

講師:牟田 武生

心が表面化した、家庭内暴力、摂食障害

私も年がら年中、車のガソリンを一杯にして寝る。包丁を右手に持って左手で電話をかけてくる。「今から親を殺そうと思うのだけど、どう思う?」

「お前、電話かけているのなら殺さないだろう」と思うんだけれど、親の場合は、

「包丁の刃はどっちを向いています?上を向いています?下を向いています?」

「上を向いてます」って言ったら、

「ちょっと待ってて下さい、逃げてて下さい、今から行きますね」って行くんだけど、

「下を向いていたら大丈夫です、殺す気持ちはないですから」なんて、犯罪心理学ではそうなんだけども。家庭内暴力の時代は本当に大変でした。

家庭内暴力を起こさない子はどうなっていくかというと、神経症、こだわりが強くなる。何か手にばい菌がついているんじゃないか、見えるほこりとか、ゴミは気にならないんだけど、見えない汚れ、ばい菌は気になる。

「特に親父の手の指紋が気になる」なんて言い出すわけ。床を全部拭かなきゃ許さないわけです、それも「こうやって拭いた上に、更にこうやって十回ずつ拭け」って母親に命令したり、ばい菌がついているから手を三十分も四十分も洗っている子、脂っ気が何も無くなってしまう、顔もそれをやる、ゴシゴシゴシゴシ、それが強迫神経症ですね。そういう人たちが凄く増えた。自分は学校に行けない、だめな奴、周りに見てみればそんなに学校に行けない奴なんてほとんどいない、だからやはり自分はおかしいのじゃないか。でも何とか自分はしたい、どうにもならない、こだわりも強い、そして神経症が出てくる。

女の子はというと摂食障害、ストレスを感じる、ガバッとご飯を食べる。どうやって食べるのか、そんなにたくさん食べられない、あんパンを握りつぶしてなるべく小さくしてパカッと口にくわえる。ポテトチップの袋を三袋も四袋も食べちゃう。冷蔵庫の中に何もなくて、マーガリンだけあるとなったら、マーガリンをアイスクリームのように食べる。こういう人たちが出てきた。しかし、太るんじゃないか、テレビを見ても雑誌を見てもみんなスタイルの良い、痩せた人が美しいとさせている。自分はあんなに食べちゃった、どうしよう。トイレに行ってワアッと出す、手に吐きタコができます。歯は胃酸が出るからボロボロになる、シンナーをやっているわけじゃないですよ。お母さんがスーパーへ行って毎日買い物をしてくるのを全部食べちゃう。いわゆる要求に限度がなくなってしまう。これは摂食障害ですね。

摂食障害の男の子も最近でてきました。男の発生率はというと、ほんの少し、男だって乳がんになるのですが、それと同じくらいの発生率なんですけど、最近もっと分かってきています。割と女性的なスラッとしたかわいい滝沢君みたいなのがもてはやされてますね。決してヤンキースの松井みたいなのは良い男とは言わないです。男の子も美しさ願望でこれをやっている。困った世の中だなと思っているけれど、そういう人たちが、その第三期の時にたくさん出始めたのです。

いそがれる治療の分化

病院はというと、普通の領域と、病気としての異常な領域、いわゆる統合失調症の人たちを含めて、異常と正常、その中間ぐらいの人たちに対して今でも厚生労働省は分化させていないのです。だから、いわゆる神経症の人たちに対して統合失調症の人と同じ投薬をやっています。たまたま私がこちらに来るというのを知って、私を訪ねてきた堺の人は、十一種類の薬を病院で出されているのです。どう考えても普通の自律神経失調症なのに、もうぼろぼろです。ここに来るのにお父さんの車に乗せてもらって、やっと来たそうです。まだ分化していないので、統合失調症と同じ治療をやっている。三年、四年と飲んでいるから、もう薬物に対する依存傾向が強くなりますよね。

その中で一番困るのがリタリンという薬です。化学構造式で言えば、覚醒剤とほとんど同じ。これは依存が強くて飲みたくなって、止まらなくなっちゃう。僕らがお酒を飲んでホッと気持ちよくなった状態が起こるわけです。緊張がすごく強い、筋肉がこういうふうになって震えてきちゃう、でもその薬を飲むとフッと出来る。気分が良いわけですね。また薬くれ、薬くれとなる。今、ADHDって騒がれていますけれど、日本ではその子どもたちにも投与を始めていますからね。十年後が恐ろしい社会だなという気がします。

僕が言っているのは厚生労働省に、早く「普通」と「異常」と「真ん中の領域」と分化して、真ん中の領域という人のための治療研究をやってほしいわけ。まだ分化が出来ていません。やる必要があるんだろうと言うけれど、財務省、旧大蔵省は認めていない、予算が出ない。そんなこと言ったって、三億くらいのお金なのになぁと思うのですけれど、それを本当はやった方が良い。

2006/02/02